上海“研修”旅行、300人は県民に 鹿児島知事、批判受け修正

上海“研修”旅行、300人は県民に 鹿児島知事、批判受け修正
産経新聞 2013年6月13日(木)9時30分配信

 鹿児島県が、鹿児島−上海便の存続を理由に県職員1千人の上海研修事業費として1億1800万円を補正予算に計上した問題で、伊藤祐一郎知事は12日の県議会で「300人は県民に参画を求める」と述べ、計画を変更する考えを表明した。「お手盛り予算」への激しい批判を受け、さすがの剛腕知事も譲歩せざるを得なかったようだが、700人の職員を派遣することは変わらず、小手先の弥縫(びほう)策としか言いようがない。(谷田智恒)

 県議会は12日、代表質問を行った。自民党県議団の藤崎剛氏は「県職員の研修費を県が全額負担することに県民から批判的な意見が出ている。一般県民の派遣を求める声も上がっている。事業の考え方を明らかにしてほしい」と質した。

 伊藤氏は「中国経済の波及効果をもたらす航空路線の維持は県の成長発展に不可欠だが、利用低迷が続き危機的な状況だ。民間にも利用を要請してきたが搭乗率向上につながっていない」と述べ、路線存続には県のテコ入れが不可欠だとの考えを強調。「上海への職員派遣について『広く県民の参画を図るべきだ』との意見を踏まえ、300人程度は民間から参加を求めたい」と述べた。

 だが、民間人の選考については「今後具体的に検討する」とあいまいなまま。県は今年度予算で「環黄海青少年派遣事業」として1725万円を計上しているが、伊藤氏は、この事業での青少年100人の派遣先についても「すべて上海に派遣する」と述べた。

 民主、社民両党系の会派「県民連合」の福司山宣介氏は、伊藤氏の修正方針を「一定の配慮があったと認められる」と評価。その上で「500人は県民からの公募とし、県民研修は来年度も継続する考えはあるか」と質したが、伊藤氏は明言を避けた。

 議会終了後、伊藤氏は記者団の取材に応じ、修正案について「いろいろなモノの考え方があるが、今年度は300人が限度」と述べ、これ以上の修正には応じない考えを強調。「全額公費負担としたのは時間がなく切迫した緊急措置だったからだ。1千人も300人も根拠がない。一定のロットが必要と考えた。私の周りで反対の声はない」とも述べた。

 一連の発言により、事業は、まず「上海便存続」ありきで、1千人という数字が一人歩きしたずさんな構想だったことが明らかになったといえる。

 県は6月の補正予算案に、県の一般行政職と教職員の各500人を3泊4日の日程で上海で研修する事業として1億1800万円を計上した。県には10日夕までに電話約170件、メール約300件の意見が寄せられ、ほとんどが「千人規模で行く必要があるのか」「税金を福祉や介護などほかの分野に使うべきだ」などの批判だった。

 補正予算案の成否は、51議席中35議席を占める自民党県議団の動向で決まる。自民党県議団の吉野正二郎県議は「500人でも700人でも丸抱えで県職員を派遣するのはおかしい。弥縫策では根本的な問題解決につながらない」と述べ、修正しても容易には賛成できないとの考えを示した。

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