長い髪の奥からのぞく目はうつろ。本誌カメラマンが撮った送検で、容疑者は終始うつむき暗い表情をみせていた――。 警視庁薬物銃器対策課は1月9日、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)の疑いで住所不定、職業不詳のメキシコ国籍サインス・バレンスエラ・フェルナンド容疑者(33)を逮捕した。昨年2月に仲間と共謀し、海上貨物に隠した大量の覚醒剤を移送。神奈川県の横浜港から日本への密輸に関与したとされる。 「犯行は昨年2月から3月にかけて行われていました。犯行手口はダイナミック……。コンテナをクレーンで巻き上げる際に使う『ギアボックス』という大型重機2基の内部に、500gから1㎏に覚醒剤を小分けにしたラップ袋がビッシリと敷き詰められていたんです。 覚醒剤の入った大型重機は、しばらく別の場所に保管。同年8月に千葉県野田市にある倉庫に移し、フェルナンド容疑者らが解体したとされます。とり出された覚醒剤は、流通役のブラジル人(すでに逮捕、起訴)に渡されていました」(全国紙社会部記者) ◆「反社会的勢力とのパイプ」 横浜港に運び込まれた大型重機を不審に思った東京税関が、内部の覚醒剤を発見。警視庁が捜査に乗り出し、解体のため千葉県内の倉庫に現れたフェルナンド容疑者を現行犯逮捕したのだ。密輸された覚醒剤は計157㎏、末端価格は103億円にのぼるという。 フェルナンド容疑者はメキシコの麻薬カルテルと関係しているとみられるが、警視庁は認否を明らかにしていない。神奈川県警の元刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「大量の覚醒剤を海上輸送するだけでなく、保管場所や解体用の倉庫まで用意していたとか。段取りの良さを考えると、日本国内の反社会的勢力とのパイプがあるはずです。密輸の手口は豪快すぎます。通常は小さい袋に詰めた麻薬をバッグなどに隠し国内に持ち込むのですが、大型重機の中に隠すとは……。 重機内を検査するには解体しなければならず、内部に麻薬を入れていても発見されづらいでしょう。おそらく税関は以前から不審な重機をマークしていたと考えられます。麻薬カルテルは思いもよらない手口で密輸することが多い。密輸手段を頻繁に変えるのも彼らの特徴です」 警視庁は、発覚した密輸覚醒剤の国内流通ルートについても捜査を進めている。