黙る容疑者に「ガキ」「お子ちゃま」 検事の暴言、高裁も賠償命令

黙秘権を行使したのに横浜地検の検察官から長時間にわたって侮辱的な取り調べを受けたとして、元弁護士が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が6日、東京高裁(松井英隆裁判長)であった。判決は、一審・東京地裁に続いて取り調べが違法だったと認めて国に110万円の賠償を命じた。「黙秘権を侵害された」とする元弁護士の主張は認めず、控訴を棄却した。 元弁護士の江口大和氏は2018年、犯人隠避教唆の疑いで横浜地検特別刑事部に逮捕され、その後に執行猶予付き有罪判決が確定している。 江口氏は逮捕後、黙秘権を行使すると告げたが、取り調べは起訴までの21日間で56時間に及んだ。 ■「黙秘権侵害」が争点に 検察官は取り調べで、江口氏に「あなたの言ってる黙秘権ってなんなんですか。全然理解できない」と発言したほか、江口氏の弁護活動について「お子ちゃま発想」「ガキだよね」などと述べた。一審判決はこうした発言について「原告の人格権を侵害する」と判断。「何らかの供述をさせようとしたもので、黙秘権の保障の趣旨にも反する」と述べた。 江口氏側は「黙秘すると告げた後も取り調べを続けたこと自体が黙秘権の侵害だ」と主張したが、逮捕・勾留中の容疑者の「取り調べを受ける義務」を肯定した最高裁判例を根拠に、判決は退けた。 国は地裁判決に対し控訴しなかった。高裁では、黙秘権侵害だとする江口氏側の主張をどう判断するかが主な焦点となった。江口氏側は、最高裁判例について「今回の裁判とは性質が違い、黙秘権侵害を認めない根拠にはならない」などと主張していた。(金子和史)

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