2001年2月に広島県福山市明王台5丁目の民家で主婦=当時(35)=が刺殺された事件で、殺人と住居侵入の罪に問われた無職の男(70)=同市=の裁判員裁判の判決が12日に広島地裁である。検察側は事件当時の有期刑上限の懲役15年を求刑し、被告は起訴内容を否認して無罪を主張している。地裁がDNA鑑定の結果の評価などを踏まえ、どう判断するかが焦点となる。 被告は事件発生から約20年後の21年10月、広島県警に逮捕された。現場に残された主婦の靴下などに付着した血痕のDNA型と被告の型が一致したのが逮捕の決め手だった。 公判ではこれらの鑑定結果の評価を巡り、検察、弁護側双方が対立した。検察側が証人請求した法医学者は、資料が古くて劣化したり2人分の型が混ざったりした可能性に言及した上で、「血痕には被告と同型のDNAが含まれていると考えられる」と証言した。これに対し、弁護側は血痕からは被告と異なる型も検出されたとして「一部の型は被告と一致していない」と訴えた。 検察側は「被告が犯人といえる」という状況証拠も示した。被告の自宅から押収した贈答用の調理器具セットのうち、凶器と同じ果物ナイフが見つかっていないことや被告の靴のサイズと矛盾のない足跡が現場に残っていた点。「20年間逃亡し、反省の態度もない」と強調した。 一方で弁護側は凶器や足跡では立証が不十分とし、「動機もなく、被告が殺害したとするには疑問が残る」と訴えた。 被告は被告人質問で主婦との面識はなく、現場にも行ったことがないと説明。当日は「釣り場の確認に行った」などと語った。24年前に白昼の住宅街で起きた事件はなお真相が見えないまま判決を迎えることになる。