現場で見つかった被害者女性は全身アザだらけ、複数の臓器も破裂…。2011年におきた殺人事件。なぜ女性の恋人だった犯人男はここまで激しい暴力をふるったのか? 2011年に兵庫で起きたおぞましい事件の顛末を、前後編に分けてお届け。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/ 後編 を読む) ◆◆◆ 「同棲中の彼女が胸を強く打って苦しいと言っている。胃液を吐いて、呼吸しなくなった。もう意識がない。助けて欲しい…」 深夜3時過ぎ、慌てふためいた男の声で119番通報があった。声の主は大岩和浩(当時22)。救急隊員が現場のマンションに駆けつけたところ、布団の上でぐったりしているA子さん(当時24)を発見した。 「何があったんですか?」 「ちょっとケンカして…」 大岩は救急隊員に促され、救急車には同乗したが、病院に着くと、応対した看護師をはねのけるようにしてその場を離れ、行方不明になった。A子さんは全身アザだらけで、肝臓や膵臓が破裂。約6時間後に息を引き取った。警察は殺人事件とみて捜査を開始した。 A子さんは高校時代に陸上競技で活躍し、走り高跳びで県大会2位になったこともあった。高校卒業後はスポーツ関係の専門学校に進学し、スポーツインストラクターを目指していたが、中退してパチンコ店員やゲーム店員をしていた。そんなときに知り合ったのが大岩だった。