誘い断ればチームに迷惑が… バトン指導者から性被害、1人での再起

関西に拠点を置く強豪のバトントワリングチームに所属していた男性選手に性暴力を加えたとして、昨年、チームの指導者だった男(40)が逮捕・起訴された。被害男性は当時、高校生。朝日新聞などの取材に今月応じ、指導者と選手という上下関係が被害を生んでしまう実情を語った。 2023年3月15日。指導者の男の自宅マンションから帰宅後、すぐに浴室で全身を洗い流した。 男の部屋に入ると、下半身をさわられるなどの性的行為をされたという。3度目の被害。様子がおかしいと心配した両親に、被害を打ち明けた。 被害の夢を見てしまい、眠れなくなった。出場が決まっていた全国大会にも出られなかった。 バトンを始めたのは、3歳のころ。中学生の時に男が代表を務めるチームに移籍した。高校生になると、2人きりでの食事に誘われることが増えていった。 誘いを断ったチームメートは、練習中に冷たくあしらわれ、無視されていた。男性は断れずに、最初の被害に遭った。 大会に出場できなくなったら、チームメートに迷惑がかかる――。そう思うと、次の誘いも拒めなかったという。 指導者の男は24年4月に京都府警に強制わいせつ容疑で逮捕された。 その後、男性に対する強制わいせつや強制性交などの罪で起訴された。起訴状によると、23年2~3月に自宅マンションで3回にわたり性的暴行をしたとされる。 被害から10カ月ほどが過ぎた23年の冬。先輩が「バトンの大会を見に行こう」と連れ出してくれた。 会場に響く歓声を久々に聞いて、胸が熱くなった。1人でチームを立ち上げた。コーチはいない。自分の演技を撮った動画を見返し、試行錯誤しながら練習に打ち込む。 指導者の男の裁判は来月24日に京都地裁で始まる。「謝罪はいりません。やったことを認めてもらえたら、それでいいです」と語った。(関ゆみん)

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