「グーグルマップ」止まらぬ情報流出…マイマップの落とし穴
2008.11.25 11:42 産経新聞
インターネットの地図検索サービス「グーグルマップ」で、閲覧状態になることを知らずに利用者が自作マップに個人情報を書き込み、情報流出させる事例が相次いでいる問題で、利用者側の要請でグーグル社が自作マップを削除しても、マップに記した個人情報が再び閲覧できてしまうケースがあることが25日、分かった。一つの自作マップでも、書き込まれたすべての情報を一度に消去できないためという。同社は特別態勢を敷き、流出した個人情報の削除を進めているが、作業が終わるには数週間はかかるという。
家庭訪問に活用
問題となっているのは、ネット上の地図に複数の目印や説明文を示した自作マップを表示するマイマップ機能。
自作マップに個人情報を書き込み、流出させた事例として目立つのが、小中学校などの児童・生徒の名前や住所。千葉県君津市の市立中学では、昨年度の3年生24人分の住所が流出。名古屋市市立中学でも1年生70人の自宅などの情報が流出した。ともに担任教諭が家庭訪問に使うために作成していたという。
文部科学省には今月上旬、東京都内の男性から、全国の小中高計35校で情報が流出しているとの指摘があった。
同省が調べたところ、確認できただけで全国で約40校に上るなど、教育現場だけでも被害は拡大。他の学校でもマイマップ機能で児童・生徒の住所情報を流出させていないか、都道府県教委と政令市教委を通じて注意喚起したという。
削除したのに…
この機能は本来、情報交換のため飲食店や紅葉スポットといった、おすすめの場所を示すマップを想定していた。しかし、個人情報流出が相次ぐ状況を受けて、グーグル社はマップの作成者以外でも削除を申請できる窓口をネット上に開設、公式ブログでも注意を促した。
しかし、申請を受けた同社が、マップのタイトルを削除しても、マップに書き込んだ目印や説明文のデータを一度に消去できないことが判明。同社は「緊急態勢で削除を急いでいるが、世界中の数千台から数万台のサーバーでデータを管理しており、完全削除には最大で数週間かかる」と説明している。
「非公開」の誤解
情報流出が相次いだのは、設定のわかりにくさに原因があるとの指摘もあがっている。マップは「公開」と「非公開」のどちらかを選ぶ設定があったが、非公開はマップ検索の対象から外すという意味。個人情報を書き込んでいた利用者は、ネット上で非公開になると勘違いしたとみられる。非公開に設定しても、マップのURLを直接入力したり、ヤフーなど他社の検索エンジンで検索すると、検索結果として表示されてしまうという。
このため、同社は非公開の設定を「限定公開」に呼び方を変更するとともに、ネット検索各社に対し、限定公開のマップを検索対象から外すよう要請している。
佐々木良一・東京電機大学教授(情報セキュリティー)の話 「個人ユーザーがサービスの特性を完全に理解して使うことは難しく、グーグルなど管理会社側が危険性を分かりやすく周知する必要がある」
【グーグルマップ】インターネット検索大手「グーグル」が提供している無料地図サービス。指定した地域の店や建物などを検索したり、目的場所の地図や付近の様子を確認できる。通常の地図のほか、衛星写真を表示したり、地図と写真を複合的に表示することも可能。