アメリカのマルコ・ルビオ国務長官は27日、これまでに少なくとも300人の留学生の査証(ビザ)を取り消したと明らかにした。ドナルド・トランプ大統領は、大学での親パレスチナのデモの参加者らを取り締まる姿勢を示している。 ガイアナを訪問中のルビオ長官は、トランプ政権が取り消した学生ビザの数を記者団から問われ、「現時点で300以上かもしれない」、「私たちは毎日それをやっている。狂った連中を私が見つけるたびに、そうしている」と答えた。 このやりとりは、マサチューセッツ州ボストン郊外で25日、タフツ大学の博士課程のトルコ人学生ルメイサ・オズトゥルクさん(30)が入国管理当局によって拘束されたのを受けたもの。 覆面をした私服の当局者らによってオズトゥルクさんが連行される場面の動画は広く拡散され、インターネットで抗議の声が噴出した。 オズトゥルクさんは、F-1学生ビザを持っていたフルブライト奨学生で、児童学と人間発達学を専攻している。ビザは当局によって取り消された。 取り消しの理由を聞かれたルビオ長官は、「いろいろな場所で言ってきたことだが、もう一度言う」と前置きした上で、「アメリカに来るために学生ビザを申請した人が、単に勉強するためではなく、大学を破壊し、学生らに嫌がらせをし、建物を占拠し、混乱を引き起こすような運動に参加するために来るのだと言うのなら、私たちはビザを与えない」と述べた。 オズトゥルクさんに何らかの犯罪容疑がかけられているかは不明。ルビオ長官は、嫌疑については何も語らなかった。 オズトゥルクさんは、親パレスチナの抗議行動に参加してきた。昨年、学生新聞で共同執筆した意見記事では、タフツ大学に対し、イスラエルと関係のある企業への投資を引き揚げ、「パレスチナ人の集団虐殺」が行われていることを認めるよう求めた。 オズトゥルクさん側のマフサ・カンババイ弁護士は、「全国的なパターンからすると、彼女が言論の自由を行使したことが、拘束につながったようだ」とロイター通信に話した。 ■パレスチナ支持の留学生に対して アメリカでは、パレスチナ人への支持を表明した留学生に対し、入管当局が対応に乗り出している。 トランプ政権は、アメリカの「外交政策と国家安全保障上の利益と敵対」する米国民ではない人々を国務省が国外追放できるとする、移民国籍法にのっとった措置だとしている。 トランプ大統領は、政権が反ユダヤ主義と判断したものと闘うと公約しており、1月の大統領令にも盛り込まれた。 以来、政府はコロンビア大学への4億ドル(約600億円)の助成金を取り消し、他の大学に対しても同様の措置を取ると脅している。コロンビア大学について政権は、キャンパスでの反ユダヤ主義への対応に失敗したと批判している。 大学デモに絡む拘束で大きく注目されているのが、コロンビア大学の卒業生で、有名なパレスチナ人活動家のマフムード・ハリルさんだ。訴追されないまま、ルイジアナ州で拘束されている。 オズトゥルクさんも、ルイジアナ州の拘束施設に連行された。マサチューセッツ州の連邦判事は25日、オズトゥルクさんを同州で拘束するよう命じたが、連邦政府の記録によると、ルイジアナ州で拘束されたままとなっている。 政府は、オズトゥルクさんの拘束に関する詳しい情報を28日までに提供するよう、命じられている。 国土安全保障省のトリシア・マクラフリン報道官は今週、オズトゥルクさんについて、「ハマスを支援する活動に関わった。ハマスは、アメリカ人の殺害を喜ぶ外国のテロ組織だ」と述べていた。 マサチューセッツ州選出のエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党)は、オズトゥルクさんの拘束を、「市民の自由を抑え込む憂慮すべきパターンの最新例」だと批判する声明を発表。 「トランプ政権は合法的な身分を持つ学生を標的にし、適正手続きなしに人々を地域社会から引き離そうとしている。これは私たちの憲法と基本的自由に対する攻撃であり、私たちは抵抗する」とした。 他方、連邦判事は26日、コロンビア大学の学生ユンソ・チョンさん(21)を強制送還目的で逮捕する動きを停止するよう、トランプ政権に命じた。チョンさんは幼少期に韓国からアメリカに移住し、永住権を持っているとされる。 (英語記事 Marco Rubio says US revoked at least 300 foreign students' visas)