マンガの実写化作品では、ありえない人外のような怪物や常軌を逸したサイコパスなど、2次元ならではのキャラをどう再現するのかも注目ポイントとなります。懸念していたファンも、納得するほど怖かった悪役キャラを振り返ります。 ●『ゴールデンカムイ』二階堂浩平/洋平(演:栁俊太郎) 日露戦争終結後の北海道を舞台に、隠されたアイヌの莫大な埋蔵金をめぐって繰り広げられるバトルを描いた『ゴールデンカムイ』(作:野田サトル)の実写化シリーズは、個性的な各キャラクターの再現度も大きな話題となりました。 主人公の「杉元佐一(演:山崎賢人)」たちの前に立ちはだかる、陸軍第七師団の面々もいずれも曲者ぞろいですが、ビジュアルや独特なセリフも高いクオリティーで再現されています。なかでも柳俊太郎さんが演じた、暴力的な性格と異常な言動が強烈な双子の軍人「二階堂浩平、洋平」には「もはや本人」「二階堂が二階堂してた」と、絶賛の声が相次いでいます。 二階堂兄弟は不気味なほどに行動や性格が一致する点も恐ろしいキャラで、杉元を探して蕎麦屋に行き、ふたりそろってニョキっと顔を見せるシーンから気味悪さが感じられました。さらに馬車のソリの上で杉元と戦うオリジナルシーンでは、くねくね動きながら応戦する姿を見せており、「人間離れした絶妙な気持ち悪さがあって最高」「二階堂の狂気を動きでここまで再現されると怖い」と絶賛されています。 1作目の映画で洋平が死亡した後、続くWOWOWでのドラマシリーズでは浩平がおなじみの「ヘッドギア」を着けた姿となり、だんだん幼児的になっていく言動の再現度も込みで「かわいい」と人気を集めていました。 ●『夏目アラタの結婚』品川真珠(演:黒島結菜) 2019年から「ビッグコミックスペリオール」(小学館)で連載されていたマンガ『夏目アラタの結婚』(作:乃木坂太郎)は、2024年に映画化されました。元ヤンキーで児童相談所に勤務する職員の主人公「夏目アラタ(演:柳楽優弥)」が、ある目的から連続殺人犯の死刑囚「品川ピエロ」こと「品川真珠(演:黒島結菜)」と、獄中結婚をするサスペンスです。 真珠は日本中を震撼させた連続バラバラ殺人事件の犯人で、逮捕時は肥満体でピエロのメイクをした風貌でした。しかし、面会で現れた真珠は、痩せて可憐な印象を与える小柄な美少女となっており、アラタは衝撃を受けます。 原作マンガの真珠は歯の治療を一切受けずに育った過去から、虫歯だらけでガタガタの歯並びをしているビジュアルで、読者に強烈なインパクトを残しました。黒島さんは5か月かけ、特注のマウスピースによって真珠の歯を生々しく再現しています。 さらに何の感情も宿していないうつろな目や、婚姻届を持参したアラタにうれしそうに「好きだよ、アラタ」と甘い言葉をささやく姿に、「会う度に言動が支離滅裂な、常人には理解できないキャラクターをここまで再現するのがヤバい」「特殊メイクとはいえ、太ったピエロのときまで演じてるのエグい」と、朝ドラ『ちむどんどん』などのさわやかなイメージも強かった黒島さんの演技に驚きの声が多々出ていました。 ●『キングダム』ランカイ 2019年より公開されている実写「キングダム」シリーズ(原作:原泰久)は、古代中国を舞台に天下の大将軍を目指す「信(演:山崎賢人)」と、後に秦の始皇帝となる「エイ政(演:吉沢亮)」の活躍を描いた作品です。 原作マンガは壮大なスケールで描かれるストーリーが魅力であるため、当初は実写化できるのかと否定的な意見も少なくありませんでした。しかし、最新の映像技術も駆使した大迫力のバトルシーンや妥協のないキャラクターの再現度には、原作ファンも納得し、2024年までに公開された映画4作品全てが興行収入50億円を超える大ヒットを記録しています。 本作に登場する個性的なキャラクターたちの再現度は、脇のキャラに至るまで非常に高く、各俳優の実力やメイキャップのクオリティーも称賛を集めました。シリーズ1作目『キングダム』で、信たちの前に立ちはだかる敵キャラクター「ランカイ」もそのひとりです。 ランカイはエイ政の弟で反乱の首謀者でもある「成キョウ(演:本郷奏多)」に従っている怪物で、並外れた怪力で信たちを圧倒します。マンガでしかありえないようなビジュアルのランカイは、芸名の通り201cmという巨漢を誇る俳優の阿見201さんが、特殊メイクやマッスルスーツを使って演じていました。 カットされてもおかしくなかったランカイの登場は、「現実離れしたキャラがこんなにしっかり再現されてるなんて」「原作と出てくる場所違うし、あっさり決着ついてたけど、ここまでCGを使わずにほぼ生身で再現してたのすごすぎる」と、観客に強烈なインパクトを残していました。 ※山崎賢人さんの「崎」は正式には「たつさき」 ※柳俊太郎さんの「柳」は正式には「木」偏に「夘」