首長不信任決議、問われる影響力 かつての「伝家の宝刀」も…「議会への信頼あってこそ」

前市長が議会から2度にわたる不信任決議を受け、失職したことに伴う大阪府岸和田市長選が30日告示された。自身の女性問題で失職に追い込まれた前職を含め、計4人が立候補。選挙戦では、議会権限の中でも「伝家の宝刀」と特別視される不信任の事実を有権者がどう受け止めるか、議会の判断の〝重み〟も問われることになる。 過去2度の市長選で前職を公認した地域政党「大阪維新の会」は公募候補を立てる方針を打ち出していたが、「適任者がいない」(吉村洋文代表)として自主投票を決めた。不信任により前職を退場させる決議の一翼を担いながら、政党としては新たな「受け皿」を示せなかった形だ。 首長の進退にかかわる不信任決議は、議会の意思決定の中でも、各党・各会派の思惑が複雑に絡む「政局」の舞台だ。だが決議時点で、議会側が不信任のその先をどこまで見据えていたか、その姿勢が問題となったのが昨年11月の兵庫県知事選だった。 知事選では、自身の疑惑告発文書問題を巡り、県議会から全会一致で不信任を突き付けられ、失職した斎藤元彦氏が再選された。県議会最大会派の自民党は独自候補を見つけられず、第2会派の維新も、元参院議員が無所属で立ったが、県組織の足並みはそろわなかった。結局自民、維新の支持層からも少なくない票が斎藤氏に流れたとみられる。 総務省の統計によれば平成19年度~令和4年度に、都道府県や市町村の議会に提案された不信任決議案は少なくとも109件に上り、可決されたのは約2割の22件。平均すれば年に1、2回と、可決はそもそもが相当なレアケースだ。 提案理由は首長の逮捕やセクハラ疑惑、公約違反、首長としての資質の問題など多岐にわたる。 今回の岸和田市のように、1度目の可決で首長が議会を解散した後、改選後の議会で再び不信任が可決され、首長が失職したケースはさらに少なく、10件に過ぎない。 失職後の選挙に前職が立候補したのは10件。うち再選されたのは平成21年の鹿児島県阿久根市長選と令和2年の滋賀県甲良町長選のみ。昨年の兵庫県知事選を含めても3件で、返り咲きのハードルが極めて高いことがうかがえる。 先の兵庫県知事選で、当初予想を覆す斎藤氏の再選を実現させた大きな要因の一つが、交流サイト(SNS)を通じた新たな世論形成だったといわれる。

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