日本でも巨額被害 ロシア人ハッカーが米露協議で釈放 旅行中の「痛恨ミス」で拘束の過去

米国とロシアが2月、双方が拘束していた容疑者や被告を相次いで釈放した。米露が緊張緩和を模索する動きの一環だが、釈放された中に日本と無関係ではない人物が含まれていた。日本で11年前に発覚した巨額の暗号資産(仮想通貨)消失事件に関与したロシア人ハッカーだ。家族旅行での「痛恨ミス」で身柄を拘束。最大20年の禁錮刑が科されるはずだったが、トランプ米政権がロシアとの接近を模索する中、思わぬ形で自由を得た。 ■「世界最大の取引所」から114億円相当が消失 2月13日夜、モスクワの空港に着いた航空機から、白黒混じりの髪を刈り込んで口元や顎にひげを蓄えた40代の男が降り立った。 男はアレクサンドル・ビニック元被告。仮想通貨の資金洗浄(マネーロンダリング)などに関与した疑いで拘束され、6月に米国で判決を迎える予定だったが、米露間の協議によって釈放された。 ロシア当局も2月11日、麻薬密輸の疑いで逮捕していた米国人教師の身柄を解放。2件の釈放は18日にサウジアラビアで行われた米露外相会談への地ならしで、米露の緊張緩和を印象付けた。 一見、日本とは直接関係なさそうな事案だが、ビニック元被告には、日本が舞台となったある事件に関与した顔があった。2014年2月に明らかになった仮想通貨取引所「マウントゴックス」(東京)から巨額の仮想通貨が消えた事件だ。 マウントゴックスは、流通し始めたばかりの仮想通貨「ビットコイン」の当時の世界最大の取引所だった。ところが、不正アクセスが相次ぎ、正常に完了しない取引が増加。計85万ビットコイン(当時のレートで114億円相当)のほぼ全てが消えていたことが明らかになった。 捜査に乗り出した警視庁は、顧客から預かった現金を横領したなどとする容疑で、マウントゴックスのフランス人社長を逮捕したが、横領については無罪が確定。ビットコイン消失への捜査は進まず、行方は分からずじまいだった。 ■麻薬密輸組織の資金も管理した「犯罪ベンチャー」

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