「かわいそうと思う半面、良からぬ感情が同時に出た」-。「ウサギの島」として知られる広島県竹原市の大久野島でウサギを暴行したとして、動物愛護法違反の罪に問われた男(25)の初公判が3月26日、広島地裁呉支部(島崎航裁判官)で開かれ、「間違いありません」と起訴内容を認めた。当初は愛でる存在だったが、「関連」で画面に現れた動画から〝ゆがんだ欲求〟が生じ、狂気じみた行為に及んだ。 ■適応障害で休職中に 検察側の冒頭陳述によると、男は勤務先の会社での異動や上司の厳しい指導で体調を崩し、適応障害に。昨年9月末ごろから休職していたが、静養中にウサギの動画を見て興味を持ったという。 翌月に一度、大津市の当時の自宅から大久野島へ。このときは単に見て楽しむに過ぎなかった。その後、ウサギが生態系の底辺近くに位置付けられると知る。悲鳴を上げたり、解体されたりする動画を見るうちに、嫌がるウサギの反応を見たいと思うようにもなった。 以降、島への渡航は4回。1月9日と同21日、ウサギを蹴ったり、口にはさみの刃を差し込んだりし、計7匹を死傷させたなどとして起訴されたが、環境省によると、昨年11月から男の現行犯逮捕(今年1月21日)翌日までに、ウサギの不審死は99匹に上ったという。 男が暴行を加えた動画が自身のスマートフォンに保存されており、いずれも証拠として採用された。ウサギの体内に挿入されたはさみの刃体の長さは7センチに達し、ウサギの骨が「ポキ」という音とともに折れ、悲鳴を上げているものもあった。 同じく証拠採用された男の供述調書などによると、ウサギの毛を抜く▽耳をひきちぎる▽鼻の穴をハサミで切る▽頭を踏みつける-行為にも及んでいた。もちろん、体重は人と比較にならない。 ■周囲に相談できず… 被告人質問で、虐待の直接的なきっかけとされるSNS(交流サイト)上の動画は「関連」で目に留まったと証言した。虐待欲求が高まり、「自分は異常だ」と感じ、当初は愛玩動物に対する暴行に躊躇(ちゅうちょ)こそあったが、「周囲に知られるのが嫌」で、自身の異常さを誰にも相談できなかったと明かした。 弁護人から「あなた以外がウサギを虐待していたらどう思うか」と聞かれると、「うーん…」と数秒考え込み、言葉を絞り出した。