高まる王制復活論 デモ頻発、政権は元国王訴追辞さず ネパール

【ニューデリー時事】2008年に共和制へ移行したネパールで、王制復活を求める声が勢いを増している。 王党派による大規模デモが頻発。政権は暴力行為を扇動したとして、同年退位した元国王の刑事訴追も辞さない構えを見せている。 「今の政治は汚職がまん延し、指導者は国の問題に真剣に取り組んでいない。若者は仕事を求め海外に流出している」。8日、首都カトマンズで行われたデモを主催した野党・国民民主党の指導者の一人、クシュブ・オリさん(31)はこう述べ、「国のさらなる危機を防ぐには王制復活が必要だ」と力を込めた。 首都では3月28日にも大規模なデモが発生。デモ隊の一部が家屋に放火するなど暴徒化し、当局は外出禁止令を出した。デモ隊と治安部隊との衝突で地元記者を含め2人が死亡、約70人が逮捕された。 ネパールは内戦や民主化運動を経て08年、王制を廃止して共和国となった。共和制移行の過程で政教分離も決めた。その後、王制復活を求めるデモはたびたび起きたものの、直近の発端はギャネンドラ元国王の今年2月の演説だった。 元国王はその中で「国を守り、繁栄させるためには全ての市民の団結が必要だ」と訴えた。王党派は、元国王が政治体制転換に向けた運動を呼び掛けていると捉え、政争に明け暮れる既存政治家への不満を背景に急速に勢いづいた。 デモで死者が出たこともあり、共和制擁護派の与党・統一共産党(UML)を率いるオリ首相は3月31日、議会の演説で「元国王であっても犯罪行為は免責されない」と述べた。 地元の政治アナリスト、チャンドラ・デブ・バッタ氏は、政権がデモ隊を「反憲法派」と見なしたことで対立が先鋭化したと指摘。王制廃止は国民投票を経ず決まったため、「正当な手続きが踏まれていないことに深刻な懸念を抱いている人が相当数いる」と語った。

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