◇社会学的皇室ウォッチング!/150 これでいいのか「旧宮家養子案」―第47弾― 旧宮家養子案では、養子を取りたい現皇族と旧宮家にある男系男子が当事者として合意さえすれば縁組が成立する。そこに国会の関与はない。国会の容喙(ようかい)をなるべく排除しようという姿勢は、旧宮家の「現状」や「意図」について何も明らかにしないまま皇室典範を改正させようと目論む政府の姿勢にも表れている。(一部敬称略) 衆参両院の各党・会派による全体会議(3月10日)で、立憲民主党の馬淵澄夫は、1947年に皇籍離脱した旧11宮家の子孫の「現状」、そして皇籍復帰の「意思」について政府は確認しないのかと追及した。これに対し内閣官房参与の山﨑重孝は、「意思」の確認は制度ができる前には実施できないと答えた。現皇室典範では養子が禁止されており、今、「意思」確認をすることは、違法な行為を前提に聞くことになるためだという。将来の法改正後の「意思」を法改正前に聞くことが本当に許されないのかという疑問がわくが、それは措(お)き、「現状」の確認の方はどうか。 4年前の「有識者会議」でヒアリングを受けた男系継承維持派の国士舘大特任教授、百地章は旧宮家の略系図を示した(2021年5月10日)。百地の説明によると、11宮家のうち今後も男系で繋がる可能性があるのは賀陽(かや)、久邇、東久邇、竹田の4家だという。四つの家系には20代以下の未婚男子が少なくとも10人いるというのが百地の説明だ。 百地の示した系図を、他の情報と併せアップデートしたのが別掲の略系図である。宮内庁宮務課は、旧宮家当主とは連絡を取っている。系図を確かめるぐらいなら、容易にできるはずだ。政府は国会に対し、こんな簡単な情報も示さず、「とにかくまず制度だけ作りましょう」と急(せ)かしている。国会軽視も甚だしい。 ◇いずれ危機は再来 不誠実な情報隠し 略系図の最上段は、敗戦直後に皇籍離脱を経験したか、あるいは、昭和20年代に生まれた戦後旧宮家の第1世代である。最下段は、その孫たちの第3世代で、高校生、大学生が中心だ。自らの人生を自らの力でこれから歩もうとする若者である。そんな青年たちに「皇族となって、現在の皇室の活動を手伝う意思はありますか」と尋ねることを想定してみる。自らの自由や人権を捨て、覚悟を持った「皇族となる」という答えは、あまり返ってこないのではないか。仮に決意を固めたとしても、悠仁さまと同じプレッシャーを感じるだろう。すなわち、その青年は伴侶を探し、その女性に跡継ぎたる男児を産むことを求めなければならない。