昨年、全国で発生した金属盗の被害額が前年比約3億1200万円増の約135億9900万円に上ったことが14日、警察庁のまとめで分かった。銅の国際価格の上昇が背景にあるとみられ、太陽光発電所などの銅線ケーブルを狙った犯行が急増している。政府は今国会に金属盗対策法案を提出。警察当局も、盗品と知りながら買い取りを進める悪質な業者の摘発を強化し、盗品の流通を絶つ方針だ。 摘発された買い取り業者の経営者は中国人 「高価現金買取」-。栃木県小山市の幹線道路沿い。そんな看板を入り口に掲げた買い取り業者の敷地には、廃品とみられる自転車や金属くずが積まれ、重機などが置かれていた。この業者は盗品と知りながら銅線ケーブルを買い取っていたとみられる。 警視庁などの共同捜査本部は昨年、盗品等有償譲り受けの疑いで、この業者を含む茨城、栃木両県にある金属買い取り業者4店舗を一斉に家宅捜索した。会社の帳簿類やパソコン、売却客の身分証の写しなどを押収。中国籍の経営者らを同容疑などで逮捕した。 警察当局は昨年以降、盗まれた銅線ケーブルの流通経路となっている買い取り業者の摘発を強化している。捜査幹部は「犯行グループが盗んでも、買い取り先がなければお金にならない。業者を潰さなければならない」と話す。 認知件数は令和2年の約4倍で過去最多 警察庁によると、昨年の金属盗の認知件数は2万701件。統計を始めた令和2年の約4倍に達し最多となった。被害品のうち金属ケーブルは1万1486件で半数以上を占め、そのうち太陽光発電施設の金属ケーブル盗は7054件に上る。 材質の過半数を銅が占める。国際価格の上昇が影響しているとみられ、関東地方を中心に、山中や人目に付きにくい場所にある施設や工事現場などが狙われている。 太陽光発電施設で発生した金属ケーブル盗で摘発された147人のうち75%が外国籍だった。最多はカンボジア人の74人で5割を占めた。警察当局は外国人らによる「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」が各地で犯行に及んでいるとみている。 本人確認と取引記録の保存を義務化へ