警視庁公安部が、若手・中堅の捜査員を事件捜査の機会が多い刑事部などの他部門へ派遣する人材育成策を来週から始めることが捜査幹部への取材で判明した。化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件の反省などを踏まえ、公安部の捜査員に経験を積ませ、捜査力の向上につなげるのが狙い。 派遣される捜査員は、20代~40代前半の警部補と巡査部長の5人程度。公安部と併任の形で、刑事部や生活安全部、組織犯罪対策部に所属し、殺人事件や経済事件などの捜査や防犯カメラの解析を担当する。 公安部で経験を積んだ捜査員はこれまで、他部門を経て公安部に戻ってくるケースはあまりなかった。また公安部は内偵捜査が多い一方で、逮捕など立件に至る捜査を経験する機会が少ないという課題があった。 今回の取り組みでは、捜査員が立件に至る事件が多い他部門で捜査手法を学び、派遣先から戻った後に公安部での捜査に生かしてもらうことを見込んでいる。 派遣期間は1~2年程度で、2026年度以降も継続する。捜査幹部は「大川原化工機の捜査の反省もあり、緻密かつ適正な捜査をこれまで以上に担保する必要がある」としている。 また、公安部は1月から警察署の公安係員を家宅捜索や容疑者の取り調べなど本部の捜査に従事させる取り組みを始めた。24年には理事官級の「捜査指導官」を新設するなど、捜査力の向上を目指している。 大川原化工機の社長らが東京都と国に損害賠償を求めた訴訟では、1審・東京地裁が23年12月、警視庁公安部と、起訴した東京地検の捜査の違法性を認め、東京都と国に計約1億6200万円の賠償を命じた。会社側と国・都の双方が控訴している。【木下翔太郎】