心のノート「気持ち悪い」に反論 正義教育
2009年12月6日17時51分配信 産経新聞
文部科学省の道徳の副教材「心のノート」をめぐり、政府の行政刷新会議の仕分け作業で仕分け人が、「正義」を取り上げたページなどを例に「あるべき心の見本市で気持ち悪い」などと批判した。一方、学校では暴力行為が増加、ネット上の中傷などいじめが陰湿化する中で、「正義は学級運営の基本」との意見もある。正義をどう教えるか識者らに聞いた。
「心のノート」をめぐり、「気持ち悪い」と批判されたのは先月の行政刷新会議の仕分け作業。仕分け人の一人で、元東京都杉並区立和田中学校長の藤原和博氏が、中学生用の「心のノート」に出てくる「この学級に正義はあるか!」と正義をテーマにしたページを例などにし、「あるべき心の見本市ですごく気持ち悪い。副読本は多数出版されており国が強制する根拠はない」などと批判した。
これに対し、『「命の授業」の視点を授業する』(明治図書)など道徳関連の著書がある北海道雄武(おうむ)町立雄武中学校長の長野藤夫氏は「公立中学校長経験者とは思えない非論理的な言葉。日教組が道徳教育を否定・拒否しながら『あるべき心』を徹底的に破壊してきたために今、『あるべき心の見本市』が必要になったということを理解できていない。教師さえ学習指導要領だけでは具体的にどのように教えればいいのか分からないのが実情だ」と指摘する。
また全日本中学校道徳教育研究会会長の東京都台東区立駒形中学校長、木村俊二氏は「いじめでは傍観者となる子供たちの問題もある。正義について、こういう時代だからこそ取り上げる意味がある。うわべだけの正義でなく、しっかり考えさせることが必要」とし、「道徳の副読本は文学的な読み物が多かったが、心のノートはイラストや詩なども多くし、子供たちの感性や視覚的に訴え、考える工夫がされている。道徳の授業だけでなく保護者会などでも紹介し、家庭を含めさまざまな場面で活用できる」と話す。
教師出身で生徒指導に詳しい参院議員、義家弘介氏は、「心のノート」に取り上げられた会津藩士の心構えを定めた「什(じゆう)の掟(おきて)」(虚言(うそ)をいう事はなりませぬ/卑怯(ひきょう)な振る舞いをしてはなりませぬ…)を例に次のように指摘する。
「正義感は、言葉にしにくいが武士道から続く本質的な公徳心だと思う。若い教師と話すが、日本人が長い歴史の中で大切にしてきた正義感というものを語られずに育っている。どういうものを正義としてとらえ、尊(たっと)んできたのか伝える。もちろん伝えたから正義感いっぱいの子供が育つわけではないが、あるとき、『そういえば学校の先生が口を酸っぱくして正義を説いていた』と気づく。民主党は費用対効果でやっているが教育の効果は長い時間かけ醸成され、よりよきものになっていくものもある」と話す。
また教師時代の経験を踏まえ、「クラスを持っていると一日にいくつも不正義が起きる。生徒をしかること、認めることを繰り返すことによってクラスの正義が育まれる。正義というのはホームルーム運営の大原則だ」と話す。
■心のノート 神戸の連続児童殺傷事件や西鉄バス乗っ取り事件など少年事件が相次いだことを受け、心理学者の河合隼雄氏の監修で平成14年に文科省が作成。全国の小中学生全員に配布されている。小学校低、中、高学年と中学生用の4種類がある。文科省は来年度概算要求で全員配布をやめ、文科省ホームページに掲載し、必要な学校や教員が自分でプリントアウトして使い、印刷費を助成する方式にした。行政刷新会議の事業仕分けではさらに縮減とされた。