東北大論文データ流用疑惑 元助教の解雇は無効 地裁決定
2010年5月18日9時37分配信 河北新報
研究論文データの不正流用などを理由に懲戒解雇された東北大大学院歯学研究科の元助教上原亜希子さん(41)が、懲戒処分の無効などを求めた仮処分申請で、仙台地裁は17日までに、東北大の処分を無効とし、賃金を支払うよう命じる決定を出した。
本多哲哉裁判官は流用の真偽を不明とした上で「論文のデータ画像を目視して類似性が認められたからといって、流用と結論付けるのは早計」と指摘し、大学側の主張を否定した。
さらに、大学側が不正研究に関するガイドラインで定めた予備調査を省いたり、上原さんからの再実験の申し出を拒否したりしたことを挙げ、懲戒手続きの不備にも言及。「研究者の一生を左右しかねない行為の認定や手続きで妥当性を欠いていると強く推認できる」と判断した。
決定書などによると、上原さんは2006年と07年に発表した細胞の自然免疫に関する論文4本で、遺伝子を解析した写真データなどで流用があったとして、09年12月に懲戒解雇された。ガイドラインが不正行為と定める捏造(ねつぞう)、改ざん、盗用はなかった。
上原さんは記者会見で「問題とされた写真データは、論文に書いた方法で何度でも再現できる基礎実験の部分だった。大学の処分が不条理で不公正だったことが証明された」と述べた。
東北大広報課は「本学の主張が認められず、誠に遺憾。内容を精査し、対応を検討する」とコメントした。