現場からは冷静な声 教職員組合は反発 大阪府の国旗国歌条例
産経新聞 2011年6月3日(金)20時38分配信
大阪府内の公立学校の教職員に対し、式典での国歌斉唱時の起立を義務付ける条例が成立した3日の府議会。「命令に従わない教員はやめてもらう」と、ボルテージを上げる橋下徹知事に、教職員組合などは「思想統制だ」と強く反発した。一方、実際の学校現場では、多くの教員が起立斉唱するようになっており、「思想信条の自由は守られるべきだが、式典では教師個人の気持ちは心にしまうべきだ」と、条例制定を冷静に受け止める声も目立った。
府立高校の男性教諭(32)は「自分の学校でも今春の卒業式で不起立の教員が2、3人いた」と打ち明ける。「スポーツ選手が国際試合などで国を背負って戦うような場合、国歌斉唱時に起立するのは当たり前」と述べたうえで、「学校の式典で立たない先生がいれば、生徒も混乱するのでは。不起立の教師を他の教師は案外、冷めた目で見ています」と話す。
別の府立高校の男性教諭(55)も「思想の自由から反対するのはわかるが、生徒も立って歌っている中で起立しないのはやはりおかしい」と批判。
「条例として呼びかけることでそのような先生も減ってくると思う。国歌斉唱に反対するのならば、もっと政治的な場などで意見を言えばいい」と述べた。
府内の市立小学校の50代の男性教諭は「改めて条例といわれると違和感を持つが、公務員の立場で職務命令に従わないのはおかしいという知事の気持ちもわかる」としたうえで「不毛なことでごちゃごちゃするくらいなら、子供のために粛々とやった(起立して歌った)方がいいというのが現場の感覚だ」と述べた。
府内の市立中学校の校長は「うちの学校では不起立の教員はいないので条例化の影響はない」と話す一方、「もし起立しない教員がいた場合、『校長が条例を盾に職務命令を出す』とより強硬な姿勢を取ることも考えられ、かえって関係は厳しくなるのではないか」と懸念する。
一方、府立高等学校教職員組合などはこの日、「条例制定は公教育への介入で教職員への思想統制」と強く反発した。
元府立学校長で学校現場の国旗・国歌の指導の実態をまとめた「学校の先生が国を滅ぼす」の著者、一止羊大さんの話 「教職員組合が公然と国旗掲揚や国歌斉唱に反対してきた大阪でこうした条例ができるのは画期的だ。指導を無視する教員を許してはならず、今後は処分基準を明確化した条例の制定にも期待したい」