不適切採択の疑い 教員ら1社に絞り込み 八重山地区の小中学校教科書
産経新聞 2011年8月20日(土)2時36分配信
来春から使う中学校教科書の採択をめぐり、沖縄県教委が「介入」するなど問題となっている八重山採択地区協議会が昨年の小学校教科書と平成17年の中学校教科書採択で、採択権限のない現場の教員らが調査員として1社に絞り込んだ答申書を基に教科書を採択していたことが19日、分かった。調査員ができるのはあくまで教科書内容の調査・研究。採択権限の適正行使を求めた文部科学省通知に反している疑いがある。
教科書採択は一般的に、採択地区内の市町村教委の代表らで構成される採択地区協議会が、現場の教員らに調査・研究を委嘱するが、採択権限はあくまで市町村教委にある。
石垣市など3市町からなる八重山採択地区協議会関係者によると、同協議会は昨年の小学校教科書採択にあたり、教員らに調査・研究を委嘱。調査員は教科書の順位付けを行った上で答申書を作成した。
そもそも協議会規約には調査員に対する諮問、答申という形式は規定されていないが、答申書には、調査員の名前が「採択調査員」として記され、「採択教科書」の欄に絞り込んだ1社の教科書が記入されていた。「採択理由」の欄も設けられており、調査員に採択権限があるかのような書式になっていた。
同協議会は昨年7月20日に答申書通りの教科書を採択したが、その際の議題も調査員が絞り込んだ教科書の「承認」となっていた。
17年の中学校教科書採択でも同様の方式だった。
平成2年に文科省が出した通知は「教職員の投票によって採択教科書が決定されるなど採択権者の責任が不明確になることのないよう」求めている。
同協議会では不適切な採択方法を改善するため、今回の中学校教科書採択で、採択権の行使を制約する調査員の「順位付け」廃止などを打ち出したところ、教職員組合や地元メディアなどが反発。県教委が採択延期などを同協議会に求める異常な事態に発展した。
文部科学省教科書課は「調査員が絞り込んだ教科書を議論せずにそのまま採択していたとしたら不適切だ」としている。