研究費詐取容疑の元教授、白色LED開発で功績
読売新聞 2012年1月21日(土)8時44分配信
山口大の研究費不正経理事件で、詐欺容疑で逮捕された大学院理工学研究科の元教授、田口常正容疑者(64)は白色LEDの開発で大きな功績を残した科学者だった。
日本学術振興会の研究員などを経て1994年6月に山口大工学部教授に就任。最大の功績と評価されるのが、面を照らすと3色に割れて見えた白色LEDを、太陽光のように自然に照らすことができるようにした研究だ。内視鏡や美術品の照明など、新たな活用法を切り開いた。
97年には旧通産省が主導し、次世代型照明の開発を目指した国家プロジェクト「21世紀のあかり」のプロジェクト・リーダーに。2004〜09年、研究に専念できる環境が与えられる研究特任教員を務めた。「仕事も趣味も、研究」と言ってはばからなかった。
一方、同僚教員らを驚かせたのが、その「集金能力」だった。山口大赴任後に得た科学研究費補助金は約3000万円。05年からの5年間で、家電メーカーなどから計約3億2000万円の研究助成金を受けた。
ほかにも、98年から09年に120件を超える共同研究や受託研究を受け入れ、その研究費は総額で約13億3000万円に上る。同僚の一人は「彼の周りにはいくらでも金が湧き出していた。なぜ不正を働いたのか……」と話した。