<樟蔭東学園>顧問への融資 山林で代物弁済了承
毎日新聞 2012年2月19日(日)9時29分配信
東大阪市の学校法人「樟蔭東学園」(高橋努理事長)が顧問の小山昭夫氏(80)に4億3000万円を融資し返済が滞っていた問題で、小山氏が昨年12月、融資担保の山林の所有権を自身から学園に移す代わりに借金を帳消しにする代物弁済を提案し、学園理事会が了承していたことが分かった。国や大阪府は現金での回収を強く指導していたが、従わなかった。この山林を4億3000万円以上で売却するのは困難とみられ、補助金などを含む学園資産が顧問の利益のために大幅に減少する可能性が出てきた。
文部科学省などは事態を重く受け止め、学校法人運営調査委員を派遣するなど、処分に向けての手続きを検討している。一方、小山氏は弁済後の今年1月、学園理事に就任した。
学園によると、10年3月〜11年4月、小山氏に計4億8000万円を融資。小山氏は長男が経営する学校法人の寮整備などに金を使い、返済は5000万円にとどまっていた。担保には小山氏が堺市南区に所有する山林約20ヘクタールが充てられた。
同省や府はこれまで、「学校の運営資金はその学校の教育に使うべきで、融資は不適切」とし、現金での即時回収を繰り返し指導してきた。しかし、小山氏が昨年12月に担保の一部(約17.5ヘクタール)を学園に譲渡する代わりに債務を帳消しにする代物弁済を提案すると、理事会は全会一致で承認し、同月28日に契約を結んだ。
この山林(約20ヘクタール)は、小山氏関連の学校法人が06年、鑑定に基づき約1億4600万円で取得後、小山氏に所有権が移った。地元の複数の不動産業者は「買い手を見つけるのは困難」と指摘する。
同山林を含む160ヘクタールを堺市が特別緑地保全地区に指定する動きもあり、指定されれば、市に買い取りを要求できるが、法律で「時価」とされている。06年の取得価格や谷の多い地形などから、不動産業者らは「4億3000万円の回収は難しい」と指摘する。
◇理事の人事権握られ、行政指導に従わず
樟蔭東学園が小山昭夫氏への融資に対する代物弁済を認めた山林は、不動産業者らによると、融資額以上で売れる可能性は低いという。ある銀行関係者も「この山林で4億3000万円の融資を帳消しにすることは通常の取引ではあり得ない」と指摘する。国や大阪府の指導を無視して代物弁済を認め、学園資産の大幅減少の危険を招いた理事会の責任は大きい。
背景には、小山氏が理事の人事権を握り、理事が逆らえない事情がある。07年に小山氏と学園が交わした合意文書で、小山氏が学園に2億円を融資する代わりに理事や評議員を指定できることになった。小山氏は知人や部下を理事に送り込み、2億円を回収すると、今度は自身への巨額融資を議決させるなど理事会を自在に動かしてきた。
私学助成や授業料が含まれ公的な性格を持つ学園資産が私物化されてきた実態を行政はどう受け止め、対処するのか、注目される。【古関俊樹】