PC不正輸出 科協関与、メールが示唆 起訴の社長、北に送る

PC不正輸出 科協関与、メールが示唆 起訴の社長、北に送る
産経新聞 2012年2月29日(水)7時55分配信

 北朝鮮への中古パソコン不正輸出事件で逮捕、起訴されたパソコン機器販売会社「ポプラテック」社長の李舜奇(リ・スンギ)被告(49)が、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)傘下の在日本朝鮮人科学技術協会(科協、東京都文京区)の関与をうかがわせるメールを、北のパソコンブローカーに送っていたことが28日、捜査関係者への取材で分かった。

 李被告は、北朝鮮の政府直轄機関「朝鮮コンピューターセンター(KCC)」販売部長や傘下の「平壌情報センター」幹部らとも接触しており、警視庁公安部は、北のパソコンの調達役にされていた可能性もあるとみている。

 公安部は同日、外為法違反容疑で、朝鮮出版会館内にある科協など数カ所を家宅捜索した。

 捜査関係者によると、公安部が李被告やポプラ社のパソコンを押収して分析した結果、平成21年1月ごろ、ブローカーとのメール数点に、科協について触れた記述があるのが確認された。直後の2〜3月に行われた不正輸出などに科協が関係したと疑わせる内容だったという。李被告が本国から指示を受けた科協から、輸出の働きかけを受けた可能性もあるとみられる。

 ■工作機関影響下、物資を調達

 在日本朝鮮人科学技術協会(科協)は、在日朝鮮人の科学者や技術者らの団体とされるが、一方で、朝鮮労働党の工作機関の影響下にあり、北朝鮮の軍事物資開発や調達に深く関わっているとみられている。

 警視庁公安部によると、李舜奇被告は5千台以上のパソコン関連機器を、非公式ショップを経営するブローカーに送っていた。他国へのサイバー攻撃などで多数のパソコン機器を必要とする北朝鮮にとっては、“利用価値”のある協力者だったとみられる。

 科協をめぐっては、これまでにも不正輸出事件などへの関与が明らかになっている。平成15年には、ミサイル燃料開発に転用可能な超微粉砕機「ジェットミル」が不正輸出された事件で、幹部が働きかけて、万景峰号で北へ運ばせていたことが判明。18年には、陸上自衛隊の地対空ミサイルシステムに関するデータ流出も発覚している。

 李被告は公安部に対し、パソコン輸出は「ビジネス」と説明しているが、朝鮮大学校出身で、朝鮮学校の教師を務めるなどした後、会社社長に転職しており、科協も接点を持ちやすかったとみられる。

 李被告が、接触していた朝鮮コンピューターセンター(KCC)は、金日成主席、金正日総書記の指導で創設されたIT技術の研究開発機関。他国へのサイバー攻撃に関わった疑いが指摘されているほか、今年1月に大阪府警などに摘発された中古パソコン不正輸出事件でも、傘下団体にパソコンが流れたとみられる。

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