堀越学園 混迷の春

堀越学園 混迷の春
朝日新聞 – 2012年4月10日

経営悪化で混乱が続く学校法人堀越学園(高崎市、大島孝夫理事長)が閉鎖を決めた創造学園大学の東京校(東京都墨田区)が10日、本部の方針に反して入学式を開いた。東京校の教職員は第2労働組合を立ち上げ、閉鎖阻止と自主再建を主張。
新たな支援者が名乗り出て再建への期待が高まったのもつかの間、教職員への給与未払いも続き、混乱は収まらない。
創造学園大学東京校が入るビルは、大相撲の両国国技館近くにある。入学式が開かれた2階から、ビル越しに東京スカイツリーの一部が見えた。
入学者が1人もいなかった高崎本校に対し、東京では日本人1人、中国人18人の計19人が入学。在校生も約30人が集まり、元気な中国語が飛び交った。
半年以上前から募集したという。王豊・東京校所長(元学園理事長)は「相談も説明もなく、先月下旬に紙一枚で廃止通知がきた。学生と教員の生活のため、東京校を守る」と述べた。
15人前後の教職員は今月3日、堀越学園の既存労組とは別に第2組合を結成。薬師寺徹委員長(同大助教)は「理事会の対応は不誠実だ」と語った。賃金未払いは違法だとして労働基準監督署に理事長らの処分を求め、6人の理事退任を迫る方針も明らかにした。
理事会が方針通り、9月までに閉校した場合も、労組が東京校を運営すると主張。約100人の学生がおり、単体の黒字化は可能だと述べた。
学園理事会は、文部科学省から授業科目不足の指摘を受けたうえ、独立採算に近く法人にほとんど授業料が入らないことから、東京校の閉鎖を決めた。学生には高崎本校への通学を期待しているが、王所長は「高崎に行く学生はほとんどいないだろう」と語った。
     ◇
2月10日に新理事長に就いた大島孝夫氏は、米国のキリスト教団資金から約3億2千万円を確保したとし、未払い給与の一部支払いを教職員に約束した。
しかし、教団本部が支援開始に条件を付けて資金を凍結したとして、2〜3月も給与を払わず、未払いは7カ月分に達した。
条件とは、整理回収機構(RCC)が持つ債権の買い戻しだという。RCCは学園の主取引銀行だった群馬銀行から、十数億円分の債権を買い取った。大口債権者のRCCの理解を得られれば、教団本部が支援を本格化させるとしている。
複数の理事によると、学園側がRCCと文部科学省に示したのは、学生がいないコースと教員の削減だ。学生数の回復が見込めなければ、2〜3年後をめどに運営する創造学園大と高崎医療技術福祉専門学校の統合・再編を検討する。
ただ、文科省の担当者は「希望的なことが多く、正式な決定かも分からない。再建計画とはいえない」と疑問視する。
学園によると、法人の債務総額は約50億円。中核の創造学園大(総定員1120人)で、高崎本校に通うのは100人足らず。ともに閉鎖する方針の東京校に100人前後、倉敷サテライトに400人近くが在籍する、いびつな構造だ。
教職員も教団の実態や再建計画について説明を求めているが、理事会はRCCとの交渉や多忙を理由に先送りしている。男性教員の一人は「長く実権を握った前学長を解任したまではよかったが、現体制への期待はもうない」と話した。(遠藤雄二)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする