盗撮メモリーカード飲み込んで隠した教師 それでも見つかった理由は…

盗撮メモリーカード飲み込んで隠した教師 それでも見つかった理由は…
産経新聞 2012年5月27日(日)12時31分配信

 【衝撃事件の核心】

 「ガリッ」。店員に盗撮を追及された男は瞬時に手を口元に持っていき、何かをかみ砕いて飲み込んだ。小型カメラのメモリーカードだった。大阪市浪速区のアニメショップで、中学校教諭の男(55)が女性のスカートの中にカメラを差し入れたとして逮捕された事件。男は以前から店員に目を付けられていたといい、不審な行動に気づいた店員が“追跡”して犯行を確認、取り押さえた。捜査関係者によると、盗撮は第三者の発見により摘発されることが多い。自分はばれていないと思っていても、誰かがどこかで必ず見ている。天網恢々(てんもうかいかい)疎にして漏らさず−。不埒な行いは明るみに出る運命にある。

 ■アニメショップ内の追跡劇

 《またあの男だ》

 5月12日夕方、大阪市浪速区日本橋のアニメショップ。男性店員が、店に入ってきた1人の男の存在に気づいた。過去にも店を訪れては、周囲を気にする素振りを見せながら、女性に接近する行為をしていた男だった。

 《何かやるかも…》

 店員はそれとなく男の行動を監視することに。気付かず何かを物色するように店内を歩き回る男。その姿を、陳列棚の間などから目で追う店員。どれくらい時間がたったのだろうか、やがて男は20代の女性を見つけた。

 マンガやアニメ関連本などの書籍が売られている1階フロア。女性の後方から接近する男の手には、やや長めの取っ手のショルダーバッグが握られていた。そして男は、おもむろにかばんを女性のスカートの足下に差し入れた。

 《やりよった!》

 その様子を見ていた店員は男に近づき、声をかける。それを無視して、何も言わずに立ち去ろうとする男。逃すまいと、店員は男のかばんの取っ手をつかんで食い下がる。すると突然、男は手を口元に持っていき、何かを口に入れた。「ガリッ」と音がしたかと思うと、男は“それ”を飲み込んだ。「カメラのメモリーカードを飲み込んだのではないか」。店側は110番し、男は警察官に任意同行されていった。

 ■エックス線撮影に破片、便から回収

 「盗撮なんかやっていない」。証拠物を飲み込んだ余裕からなのか、男は府警の調べに対し、頑として違法行為を認めなかった。

 さらに、なぜアニメショップを訪れていたのかと尋ねると、「アニメのものが好きだし、自分の子供も好きだから」と強弁。女性の後ろをついて歩いていた理由は「清楚(せいそ)できれいな人がいたので、ついていった。そうしたら(店員に)声をかけられ、盗撮しただろうといわれた」と、盗撮目的で女性につきまとっていたことを否定した。

 しかし、店内の防犯カメラは男の不審な行動をばっちり捉えていた。店員の証言とも合致している。その他の証拠もあわせ、府警は男の容疑が固まったと判断。犯行から約10時間40分後の13日午前3時45分ごろ、女性のスカートにカメラを差し込んだとして男を大阪府迷惑防止条例違反容疑で逮捕した。

 府警は現場付近から、万年筆のような棒状の小型カメラ(長さ約7センチ)を回収していた。しかし、画像などを記録する記憶媒体は差し込まれておらず、空っぽ。捜査員らが目を皿のようにして捜索したが周囲に破片も落ちていなかった。とすれば在りかは一つ。何かを噛んで飲み込んだ、男の体内だ。

 男は逮捕後すみやかに病院に運び込まれ、エックス線撮影。体内にあるはずのない異物が数点、確認された。次に、下剤を飲む。やがて、便とともに黒色の異物が出てきた。一般的なSDカードの4分の1程度の大きさの破片。明らかにメモリーカードだった。

 やがて男は、すべてを認めた。

 「確かに店員の言うとおり盗撮をし、カードを飲み込んだ。現場付近から発見されたカメラは、自分のものです」

 男は23日、動画を撮影できる状態にした小型カメラをショルダーバッグに隠し、下着を盗撮しようとしたとして同条例違反罪で略式起訴された。検察当局は起訴内容の中で、男が「常習として」こうした行動を行っていた、と指摘した。

 ■誰かが見ている

 実は、大阪府内の盗撮は増加しているという。

 府警によると、昨年1年間に盗撮で摘発された人数は106人。平成18〜22年は61〜78人の間でほぼ横ばい状態で推移していた。背景には、携帯端末の高機能化などがあると思われるが、担当者によると「府民の意識が高まったことも理由ではないか」という。

 「検挙(摘発)した事件の多くは、被害者本人が盗撮に気づいたものではなく、近くにいた人ら第三者が犯行を発見していた。盗撮行為を許さないという機運が社会全体で高まっているのだろう」

 今回の事件も、男にカメラを差し入れられた女性は犯行に気づかなかったというが、店員が不審な行動に気づき、逮捕につながった。こっそりと隠れて盗撮しているつもりでも、どこかで誰かが必ず見ているということだろう。

 結局、男は罰金50万円の略式命令を受けた。しかし、こうした事件は刑事罰だけにとどまらず、人生を棒に振ってしまうという大きな代償を支払う可能性がある。

 府教委は22年1月に定めた教職員らの懲戒処分指針で、盗撮をしたら停職または免職と規定。今年4月に新たに施行された府職員の懲戒に関する条例でも、「公共の乗り物や場所で痴漢、盗撮などをすると停職または免職」と盛り込まれた。

 府教委によると、最近では、府教委は今回の事件について「本人への聴取などを行い、事実が確認されれば厳正に対処する」という。

 大阪府警では現在、街頭犯罪に加え、強制わいせつなどの性犯罪の抑止と摘発に力を入れている。担当者は「痴漢や盗撮も女性らを狙った卑劣な犯罪。厳しい取り締まりを続けたい」としている。

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