清瀬いじめ事件 学校、昨年4月からいじめ把握「やれることはやったつもり」
産経新聞 2012年8月15日(水)11時42分配信
東京都清瀬市の私立中学校で、中学2年の男子生徒(13)が同級生からのいじめで暴行を受け、重傷を負うなどした事件で、学校は昨年4月ごろからいじめを把握していたことが14日、学校などへの取材で分かった。学校は加害者側への指導など対策も講じたが、「いじめは止まらなかった」としている。各地の教育現場でいじめを解決できず、警察が事件化するケースが急増しており、専門家は「学校のより強い指導が必要」と指摘している。(西尾美穂子)
■逆にエスカレート
男子生徒の両親と学校の話によると、昨年4月22日、当時中1だった男子生徒が校内の廊下で壁に体を打ち付け、全身打撲と診断されるトラブルがあった。学校は周囲から話を聴くなどして事実関係を調査。同級生の1人に突き飛ばされたのが原因と確認した。
学校は産経新聞の取材に「いじめの定義を『本人が嫌がること』とするなら、この時点でいじめを把握していたといえる」と認めた。学校によると、男子生徒は当初、「自分で壁にぶつかった」と説明したが、後から突き飛ばされたことを認め「相手にやり返されるのが怖い」と話した。そのため学校は加害者側の指導は見送り、「男子生徒を注意深く見守る」という対策にとどめたという。
しかしその後も、複数の同級生が関与して、弁当を捨てるなどのいじめがあったため、加害者を特定して指導。昼食時には、男子生徒が被害にあっていないかを確かめるなどの措置も講じたが、いじめは逆にエスカレート。ズボンを脱がす▽ハンドソープで洗髪する▽テープで足をぐるぐる巻きにする−などの行為が続き、今年1月には男子生徒がいじめで肋骨(ろっこつ)を折って重傷となる事件が起きた。
■処分後も変わらず
「けんかしよう」。肋骨を折ったとき、男子生徒は自分より10センチほど背が高い同級生(13)から呼び止められ、周囲を4、5人に取り囲まれたという。
「第1ラウンド」。周囲が格闘技の試合に見立て、はやしたてる中、馬乗りになった相手の同級生から、頭をコンクリートの廊下に打ち付けられた男子生徒は意識がもうろうとなり、病院に搬送された。両親は警視庁東村山署に被害を相談。同署は、相手の同級生を暴行の非行事実で児童相談所に通告した。
事件を受け、学校側はこの同級生を退学処分にしたが、周りではやしたてた4、5人については校長の口頭指導にとどめた。同学年にいじめのアンケートなども実施したが、その後も筆箱が水でぬらされるなど、いじめは続いた。
■「やれることやった」
「絶対に防げた事件だった」。母親は学校への不信感をあらわにする。男子生徒は3月末に転校。けがも回復したが、7月には母親に手紙を書き「相談できるのは親くらいだった。先生だと仕返しが怖かった」「死にたかった」と打ち明けた。
NPO法人「全国いじめ被害者の会」(大分県)の大沢秀明代表は「アンケートや指導をすればそれでいいという学校側の対応で、全国でいじめが深刻化している。出席停止や退学などの処分で『いじめは恥』とのメッセージを発信することが大事だ」と話す。
一方、学校側は「義務教育なので、加害者側の退学などには慎重になる。いじめ防止のため、やれることはやったつもり」とする。
学校が「手を尽くした」という認識にもかかわらず、いじめが止まらないのであれば、いじめを受けている生徒は絶望するしかない。同署は昨年4月のトラブルについても、傷害容疑で捜査を進めている。