<いじめ>200地域に専門家チーム…文科省、対策プラン

<いじめ>200地域に専門家チーム…文科省、対策プラン
毎日新聞 2012年9月5日(水)21時16分配信

 文部科学省は5日、いじめ問題で学校を支援する専門家チームを全国200地域で新設することなどを定めた「いじめ対策アクションプラン」を発表した。従来、学校や教育委員会に対応をゆだねてきたいじめ対策の方針を転換、国の体制を強化する。プラン実現のために来年度予算の概算要求に今年度(約46億円)の約1.6倍にあたる約73億円を計上する。

 ◇学校・教委任せ転換

 昨年10月に大津市立中2年の男子生徒(当時13歳)が自殺し、全国でいじめを受けた児童生徒が警察に被害届を出すケースが相次いでいることを受け策定した。

 プランでは、月内に弁護士や精神科医、元警察官ら計5〜7人を「いじめ問題アドバイザー」に委嘱。同省が防止策を作成する際や教委を指導する時に助言をもらう。いじめ問題を抱える学校や教委から要請があれば、現地で開かれるシンポジウムなどへの出席も検討する。

 教委が大学教授や弁護士らでつくる「いじめ問題等支援チーム」は、各学校の問題の解決を支援することを目的にする。学校で対応できない問題が発生した時に、学校に直接行き対策にあたることも想定する。設置する場合は国が費用を全額負担する。また、いじめを受けた子供が学校に相談できない場合も想定。自治体に「第三者機関」を設置して対応できるようにする。その際も財政支援する。

 いじめの発生を把握したり、子供や保護者を直接支援したりするため、臨床心理の専門知識を持つスクールカウンセラーと、社会福祉士など学校と家庭をつなぐスクールソーシャルワーカーも大幅に増員。カウンセラーは公立中は全校に、公立小は1万3800校(全体の約65%)に配置し、ソーシャルワーカーは現在の1113人を倍増する。

 いじめを繰り返す児童生徒を出席停止にできる制度は、出席停止にした子供の教育をどう確保するかなどを理由に、学校が適用をためらうことが多いため、制度の問題点を洗い出す。

 さらに、子供の命にかかわる重大な事案が発生した場合、教委が速やかに文科省に報告することをルール化するほか「いじめは犯罪行為にあたる可能性がある」とし、早期に警察に通報する必要性があることを学校に徹底する。【石丸整】

 ◇解説…対症療法で終わらせるな

 「いじめ」はこれまで、問題が発生した現場の学校と教育委員会が対処すべきだとされてきた。教育の地方分権を文部科学省が重視してきたことが背景にある。だがこのため、いじめが原因とされる子供の自殺が起きても、文科省は各教育委員会に通知や通達を出すにとどめ、具体的な防止策の実施や対応は現場にゆだねてきた。

 5日記者会見した平野博文文科相は従来の文科省の対応を「通達で済ませていた」と述べ、方針転換を表明した。深刻化するいじめが、子供の命の危機に直結すると国が重く認識し、関与を強化したことは評価できる。

 ただ、いじめ対策アクションプランの実効性には疑問もぬぐえない。最近のいじめは標的が次々に変わるという。誰もがいじめの対象となり得るのはなぜか。大人に心を開かない子供たちに「どうしていじめるのか」「なぜ見過ごすのか」を問い、考えさせる知恵を出さぬ限り、対症療法で終わりかねない。

 いじめを全くなくすのは困難だろう。ならば、クラスが始動し始める早い段階からいじめについて考えさせ、「見過ごさない」子供を一人でも増やす努力が必要だ。いじめの悪化を防ぎ、子供を自殺に追い込まないためだ。

 プランで設置をうたった「アドバイザー」や「支援チーム」が、そのためにどのタイミングで動き出し、効果を発揮できるようにするのか。子供たちの心に届く実行力が求められる。【石丸整】

 ◇いじめ対策アクションプランの骨子◇

・弁護士や精神科医らによる「いじめ問題アドバイザー」を文科省内に設け、対応を助言

・教育委員会に「いじめ問題等支援チーム」を新設し、文科省が財政支援

・学校のスクールカウンセラーを増員

・警察への早期通報の必要性を周知する

・児童生徒によるいじめの未然防止の取り組みを促進

・出席停止制度の調査、検証

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