いじめ、国と学校連携 文科省、200地域に専門家組織
産経新聞 2012年9月5日(水)22時51分配信
文部科学省は5日、いじめ問題への対策を強化する総合的な取り組み方針を発表した。学校や児童生徒を支援する専門家組織を全国200地域に設置することなど、国と学校現場の連携強化が柱で、本年度比約27億円増の約73億円を来年度予算の概算要求に盛り込む。
平野博文文科相は会見し「国が先頭に立ち、いじめ問題に取り組む環境整備を進めることが必要だ」と述べた。取り組み方針では、これまでの文科省のいじめ対策が、学校や教育委員会への「現場任せ」などと批判されたことを受け、現場との連携強化を打ち出した。
具体的には、全国200地域で、いじめ問題に精通する弁護士や元警察官ら外部人材を活用し、学校をサポートする支援チームや第三者機関を設置する。
大学教授ら専門家を「いじめ問題アドバイザー」として委嘱し助言を求めるほか、重大事案については現地に派遣する。スクールカウンセラーを増員し公立中は全校、公立小は65%に配置。ソーシャルワーカーも約2200人に倍増する。
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「現場知らない」指摘の声 防止条例など自治体も動き…いじめ、国と学校連携
産経新聞 2012年9月5日(水)22時54分配信
「いじめ問題に積極的に取り組む」との強い意思を示して策定した文部科学省の取り組み方針だが、問題に取り組むNPOからは「現場を知らない施策」などと厳しい声も出た。
「いじめられている子供が相談するのは、スクールカウンセラーではない」
いじめで自殺した子供の遺族らでつくるNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)理事の小森美登里さん(55)は10年以上、子供たちの声を聞くなど、いじめ問題に取り組んできた経験から、スクールカウンセラー増員の効果を疑問視する。
「カウンセラーへの相談は『言いつけた』と言われるため躊躇(ちゅうちょ)する」と指摘。「いじめ自殺の未然防止に必要なのは過去の事例検証と、『相談したら解決してくれる』という先生を育てることだ」と訴えた。
一方、全国各地の自治体でも独自にいじめ対策を強化する動きが進んでいる。
岐阜県可児(かに)市は「子どものいじめの防止に関する条例」を9月市議会に提案した。罰則規定はないが、一般市民や事業者などにも、子供を見守り、いじめを見つけた場合には、速やかに市や学校に情報提供するなど、いじめ防止に取り組む努力義務を課した。
茨城県は今秋、いじめを早期発見するため、県教委のホームページに「目安箱」を設け、県内5カ所に「いじめ解消サポートセンター」を設置し、教員OBらが解決に乗り出す。
いじめ問題に詳しい東京学芸大教職大学院の今井文男特任教授は「条例や組織を作ることはいいことだが、機能させないと意味がない。子供に一番近い学校現場での地道な取り組みが重要だ」と指摘している。