兵庫の高2自殺 動揺おさまらず 高校、際立つ不手際 生徒の欠席増加
産経新聞 2012年9月23日(日)17時52分配信
兵庫県川西市で今月2日に自殺した県立高校2年の男子生徒(17)がいじめを受けていた問題は、学年集会で自殺を「不慮の事故」と伝えようとしたり、いじめ情報の確認を怠ったりと、高校側の対応のまずさが際立っている。日を追うにつれ生徒の両親は不信感を募らせ、2年生を中心に欠席者が増えるなど波紋は広がる一方だ。いじめと自殺の因果関係など真相解明には遠く、動揺が収まる気配はない。
■「騒ぎすぎ」
今月半ば、2年生の日本史の授業中。10月末の修学旅行はどうなるのかと生徒が質問すると、男性教諭はこう応じた。
「遺族は理解してくれない。マスコミも騒ぎすぎるから(旅行に行けるか)分からないな」
配慮を欠いた発言はまたたく間に広がり、教諭が校長とともに謝罪する事態となった。
高校の対応の不手際は当初からみられた。今年6月に男子生徒の机と椅子が勝手に移動されるという、いじめ情報を別の生徒が担任に伝えた際も、男子生徒に事実関係を確認せず、両親にも伝えなかった。
男子生徒の自殺直後に、校長が「生徒には『不慮の事故』と説明したい」と両親に持ちかけたほか、教室の机の上に飾った遺影や花を無断で校長室に引き取るなど、両親の感情を逆なでする対応が相次いだ。
■警察は徹底捜査
2年生を対象とした学校の調査では、「虫」と呼ぶ▽椅子の上に蛾(が)の死骸を置く▽体が触れそうになった際に「エキスが付く」と言う−などのいじめの実態が浮かび上がった。
兵庫県警は、自殺直後に両親からいじめの相談があったため同級生らから事実関係の聞き取りを開始。「実態を正確に把握する」(県警幹部)として同じクラスの約40人全員を対象とする徹底ぶりだった。
捜査関係者によると、高校の調査にいじめへの関与を認めた同級生3人は、県警の聞き取りにも、男子生徒を「虫」と呼んだり、蛾を置いたりしたことを認めた。県警は今後、高校側関係者からも事情を聴き、事件性の有無を調べる。
■生徒に変調も
高校によると、問題発覚後、2年生を中心に欠席者が増加。保健室の利用も増え、体調不良を訴える生徒が目立つ。ある男性教諭は「とくに2年生は沈んだ様子で授業中も反応がない」と打ち明ける。生徒への中傷を防ぐという理由で制服から私服通学が始まった21日、1年の男子生徒(15)は「早く元の生活に戻りたい」と切実に訴えた。
自殺した生徒の母親は4月以降、弁当を残し週明けになると登校を渋る息子の変化に気付いていた。生徒が使っていた電子辞書には「自殺」という言葉の検索履歴が残っていたという。
両親はいじめや自殺の原因調査を求めるため川西市の第3者機関「市子どもの人権オンブズパーソン」に相談。父親は「学校に任せておけない。息子のためにも真実を追求したい」と話した。