中大付属中不正入試:有名私大の系列化加速が背景に、「信頼失う」と懸念の声
カナロコ 2012年9月27日(木)7時0分配信
中央大学横浜山手中学校で大学側からの口利きによる不正な合格が発覚した。同校は2010年に中央大の付属校になり、人気が急上昇。背景には、有名私大が学生の確保を狙い、付属校を増やす「系列化」の動きを加速させている実情がある。新興の「系列校」の不祥事に、関係者からは「中学受験に対する父母の信頼が失われる」と懸念する声が上がっている。
▽人気上昇
「付属中になったばかりという状況を考えた。一番の原因は私にある」。中央大が開いた26日の記者会見で、同校の田中好一校長が釈明した。
同校の前身は横浜山手女子中。中央大の付属校になる前は志願者数が減少して経営状態が悪化していた。受験事情に詳しい安田教育研究所の安田理代表は「付属校になってから人気に火が付き、偏差値の上昇も著しい」と説明。進学塾などによると、3回あった今春の入試は延べ2480人が出願し、倍率は8〜37倍だった。
安田代表は「日本人は試験に公平性を求め、中学受験では特にその傾向が強い。(今回のケースは)企業の縁故採用のような感覚だったのだろうが、厳密な合否判定をすべきだ」と批判した。
▽生き残り
少子化が進む中、系列化の動きは激しい。早稲田大は09年に大阪府内の中高一貫校を系列に組み入れた。関西学院大も07年に私立3校と提携して「関学コース」を設置し、エスカレーターで進学できる仕組みを整えた。
付属校を新設するのに比べ、既存の学校を系列化するのは費用があまりかからず比較的容易だ。大学は早い段階から学生を囲い込むことができ、中学・高校は有名大のブランド力で生徒を集められると双方のメリットを指摘する関係者は多い。
難関私大の傘下に入った学校の教頭は「生徒が減少して定員割れが続いたが、系列校になって改善した。生き残りの手段だ」と説明。別の私立校関係者は「エスカレーターの枠を増やして一般入試の定員を減らすことが偏差値の上昇につながり、学生の質を確保できるという大学側の利点もある」と明かした。
▽上下関係
記者会見で久野修慈・中央大理事長は、知人の孫が受験する直前、中学にその名前を伝えたことを明かし、田中校長は「圧力との受け止めはゼロではなかった」。大学側と付属校の間に“上下関係”が存在するという側面も浮かび上がらせた。
受験情報を提供している大学通信の安田賢治さんは「大学が持つ影響力は強い。悪い面が噴出した」と解説する。
ある大手進学塾の関係者は「以前の中学受験は口利きやコネがうわさになっていたが、最近は透明性が高まっていたのに。こんなことがあると学校や受験への信頼がなくなってしまう」と嘆いた。