柳川市教委、校長署名集め 口頭注意、甘い処分の根拠揺らぐ 福岡
産経新聞 2014年9月2日(火)7時55分配信
福岡県柳川市の市立小中学校の校長が、市教委幹部職員の依頼に応じ、集団的自衛権行使容認の閣議決定に反対する署名を教職員から集めていた問題で、市教委が詳細な調査をせずに、校長らを口頭注意にしていたことが1日、分かった。同日の定例市議会本会議で黒田一治教育長が明らかにした。公教育をあずかる市教委の、ずさんな対応が改めて浮き彫りとなり、口頭注意という甘い処分の根拠が揺らぐ事態となった。(津田大資)
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緒方寿光市議(柳志会)の質問に黒田氏らが答えた。
一連の問題は、反戦団体「戦争を許さない福岡県民委員会」(福岡市)がインターネットのサイトで呼びかけていた反対署名集めに幹部職員が賛同し、安倍内閣が閣議決定した翌日の7月2日、計24校の校長に協力を求めた。公立学校における教職員の政治活動を制限する教育公務員特例法に抵触する恐れがある。
だが、市教委は、組織性や積極性がないことなどを理由に、幹部職員については地方公務員法、校長らは教育公務員特例法にそれぞれ抵触しないと判断し、口頭注意処分にとどめた。
緒方氏は、市教委幹部職員が校長に署名を依頼した際の場所や時間など事実関係について質問した。
これに対し、黒田氏からは「幹部職員(の訪問)が、何時ごろとかは把握しておりません。協力したのは校長だと…」と、明確な答弁はなかった。
産経新聞の取材では、依頼を受けた24校のうち、4校の校長は、朝礼時など勤務時間内に署名を集めたことが判明している。黒田氏は勤務時間内に署名集めがあったかどうかには触れず、「勤務時間内の署名集めは、教育公務員特例法による職務専念義務違反の可能性もあり、関係機関と協議したい」と述べた。
一部の校長が「教育長と教育部長の承認があったため、署名集めをした」と産経新聞の取材に証言したことについて黒田氏は「市教委の幹部職員が来たので、誤解があったのではないか」と否定した。
市教委は、校長が教職員から集めた署名用紙を幹部職員が回収し、郵送で反戦団体に送付した日などについても把握していないという。
緒方氏が、校長らを処分する場合、詳細な調査に基づくべきだと指摘したところ、市教委の石橋正次教育部長が「誤解を招く恐れがあるとして口頭注意にした。(幹部職員は)地方公務員法に抵触していないという判断で、再調査の必要はないと考えている」と、繰り返した。
一方、金子健次市長は答弁で「誤解を招く行動であり、市民に不安があるのも事実。市教委がきちんと見解を出せるよう、再度調査すべきでないかと思う。(市教委に)調査をお願いしたい」との見解を示した。
今回の問題をめぐっては、産経新聞が報じた8月29日、下村博文文部科学相が「誠に遺憾。厳正に対処する」と述べ、文科省が実態調査に乗り出している。
黒田氏は署名問題の一般質問終了後、産経新聞の取材に、再調査も処分見直しも現時点では必要ないとの考えを改めて強調したうえで、「文科省が事実関係の確認をするのであれば、福岡県教委を通じて、きちんと対応したい」と述べた。
問題を追及した緒方氏は「署名集めが公教育の場で行なわれた事実を考えれば、口頭注意は甘い。しかも教育長や教育部長はきちんと事実関係を把握しておらず、処分の根拠は揺らいでいる。個人的に24校もの校長に署名を依頼するなど、常識的におかしい点や残された疑念が多すぎる」と語った。