<大阪府立高>生徒1割が卒業せず
毎日新聞 2014年9月22日(月)15時1分配信
◇「非卒業率」20%以上の高校も約2割
大阪府立高校の入学者のうち、中退や通信制高校への転出などで卒業に至らなかった生徒が約10%いることが、毎日新聞の分析で分かった。こうした「非卒業率」が20%以上の学校が全日制全体の2割近くを占めるうえ、5割超も複数あり、学校間の格差が浮き彫りになった。政府は「全校在学者数に占める1年間の中退者数」である「高校中退率」を算出し、大阪府では2.1%。教育現場では「実感と開きがある」との声が強い。1学年の生徒数を母数に計算した「非卒業率」の方が実態には近いとみられ、関係者は「行政は実態をもっと把握し、学校間格差に対応すべきだ」と話している。
各高校について、1年生5月時点の在籍者数と3年後(定時制は4年後)の卒業者数を入手して分析した。卒業年次が3、4年に分かれる一部の高校は除いた。「高校中退率」と大きな差があるのは、「非卒業率」は1学年の生徒数を母数に卒業時点まで追って計算するため、全学年(3または4年)の生徒数を母数として1年間の中退者数の割合を算出する政府の「中退率」より大きくなるのに加え、通信制への転出なども反映するため。
この「非卒業率」を2013年度に卒業できたかどうかを基準にみると、府内全体の平均が10.2%で、全日制だけだと8.4%だった。20%以上は132校のうち23校(17.4%)を占め、40%以上は5校、50%以上の高校もあった。学科別では工業系(9校)が24.9%と高い。定時制の平均は60.1%で、全校で40%を上回り、50%以上が10校あった。
府教委は今年度、佐野工科・定時制など就職希望者が多い高校44校を選び、教育と福祉をつなぐ専門職「スクールソーシャルワーカー」と、就職についてアドバイスする「キャリアコーディネーター」を巡回させ、中退を防ぐ支援を始めた。橋本光能高等学校課長は「困難を抱えた子が社会で生きていけるように育てることは、公教育の大事な役割だ」と話す。
実態に即していないとして「中退率」の算出方法の変更を求める声は現場の教師らから根強くある。しかし文部科学省児童生徒課は「編入や転出など正確に把握するには膨大な作業を要し、変更は難しい」としている。
元定時制高校教諭でNPO「さいたまユースサポートネット」(さいたま市)の青砥恭(あおとやすし)代表は、1割の生徒が卒業せずに学校を去っていることについて、「現場の感覚に近い数字だ。中卒扱いでまともな仕事に就けず、貧困に陥る危険性が高い子どもが多いことを示している」と話している。【福田隆】