<拳銃3D複製>懲役2年「違法性を認識」 横浜地裁判決
毎日新聞 2014年10月20日 11時49分配信
3D(三次元)プリンターで樹脂製拳銃を製造、所持したとして武器等製造法と銃刀法違反に問われた元大学職員、居村佳知被告(28)に対し、横浜地裁(伊名波宏仁裁判長)は20日、懲役2年(求刑・懲役3年6月)の実刑判決を言い渡した。
判決は、居村被告が実弾の発射に耐えられる前提で拳銃を設計した点などを挙げ「違法性の認識があった」と指摘。「発射できないよう銃口にアルミ板を挿入していた」とする被告側の主張についても、「ある程度の技術があれば短時間の容易な作業で撤去が可能であり、拳銃に該当する」と退けた。
判決によると、居村被告は昨年9〜12月ごろ、川崎市高津区の自宅で、インターネット上から入手するなどした銃の設計データを基に、3Dプリンターを使って殺傷能力のある樹脂製拳銃2丁を製造、自宅で所持した。
公判では、居村被告がツイッターに「銃を持つ権利は世界共通の基本的人権」「銃刀法を無効化する」などと書き込んでいたほか、インターネットサイトに実弾の作り方を説明する動画も投稿していたことも明らかになった。【松浦吉剛】
◇「産官学一体となった対処法の議論が必要」
拳銃製造事件を機に、3Dプリンターの利用に何らかの規制を設けるべきだとの声が上がった。業界では購入者に注意喚起したり、危険物の製造を阻止するプログラムの開発を検討したりするなどしているが、現状では有効な対策は講じられていない。専門家は「産官学一体となった対処法の議論が必要」と訴える。
「使い手のモラルとして銃を作ってはいけないし、精巧な銃はできない」。東京の輸入販売代理店は居村被告が逮捕された5月以降、3Dプリンターの購入者にこんな注意を呼び掛けている。メーカーやソフトウエア会社11社も6月、「3Dプリンター振興協議会」を組織し、各地の展示会で啓発に取り組むが、「違法行為に警鐘を鳴らし、ポジティブな使い方や可能性を紹介している」(同協議会事務局)レベルだ。
印刷業界大手の「大日本印刷」(東京都新宿区)は、拳銃やライフルなどの設計データをブラックリスト化し、出力させないプログラムの実用化を目指しているが、そもそも国内外から多種多様な設計データをどう集積し管理するのかなど問題が山積している。
国の動きはさらに鈍い。経済産業省は「事件は現行法で対処できており、新たな法規制が必要だと考えていないし、検討の場もない」とし、業界の動きを静観する構えだ。
今回の事件は、「夢の技術」が武器製造につながる危険性を内包していることを露呈させた。3Dプリンターを巡る法律を研究する新潟大の須川賢洋助教は「ものづくりの一層の高度化に伴い、危険物製造のリスクが高まることが予想される。工作加工技術の発展と歩調を合わせ、産官学が連携して対策を進める必要がある」と指摘している。【松浦吉剛】