<教員処分>体罰で952人 14年度
毎日新聞 2015年12月25日(金)19時17分配信
2014年度に体罰で懲戒などの処分を受けた公立学校の教員は952人だったことが文部科学省が25日発表した調査結果で分かった。過去最多だった13年度の4分の1だったが、大阪市立桜宮高の体罰自殺問題(12年)以前は毎年400人前後で推移しており、文科省は「従前より体罰事案がきちんと報告されるようになった。ただ依然としてあることは問題」とみている。
調査対象は公立の小・中学校、高校、特別支援学校、中等教育学校。何らかの理由で14年度に免職、減給などの懲戒や訓告の処分を受けた教員は9677人だった。
このうち体罰に関しては、懲戒234人、訓告718人の計952人(全教員の0.1%)。内容は、素手で殴る525人▽蹴る・踏みつける119人など。12、13年度は桜宮高校の問題を受け、各自治体で実態把握や処分の厳格化が進んだため、12年度は2253人、13年度は3953人と急増していた。
これに国立4人、私立170人を合わせると処分教員は計1126人、被害を受けた子どもは計1990人に上る。【三木陽介】
◇自治体さまざまな取り組み
体罰をなくすため、自治体はさまざまな取り組みを進めている。
桜宮高校のある大阪市。保護者らが理解を示せば、市教委に報告をせずに済ませる体質に問題があったとして、事件後はささいな事案も報告するよう各校に求めてきた。14年12月には体罰と暴力行為に対する処分基準を改め、子どもに非がない場合は必ず懲戒処分で臨むことにした。
事件があった12年度に502件に上った体罰と暴力行為は14年度は99件に減った。これに伴う懲戒処分は7人にとどまる一方、懲戒に至らない訓告などは87人と都道府県・政令市で最も多かった。大半が頭を少し小突くなど軽い事案だったためだといい、市教委の担当者は「小さな事案も報告が上がるようになる一方、全体の件数は減った。体罰そのものが抑えられていると言えるのではないか」と分析する。
処分件数がゼロだった山梨県は2012年度から、毎年度末に公立の小中高の児童生徒を対象に、体罰被害の有無を聞くアンケートを実施している。回答は保護者にも目を通してもらい、用紙に封をしたうえで管理職が開封するなど、子どもたちが答えやすいように配慮している。
県教委の担当者は「アンケートの他、校長会や教頭会でも体罰を含めた服務規律の徹底を求めている。体罰は許されないとの意識が教職員に浸透してきた」と話す。
同じく処分がゼロだった奈良県は昨年、小中高校などの生徒指導担当教員らを対象に、イライラや怒りの気持ちを自分でコントロールする「アンガーマネジメント」と呼ばれる米国発祥のプログラムを使った研修を初めて実施した。怒りの要因などを客観的に把握し、衝動的な行動を抑える効果があるという。
桜宮高校で問題になったのが部活動中の体罰だったことから、大学の体育会で指導実績のある教授らを招いた研修も開催している。【大久保昂、佐々木洋】