スクールセクハラの深い闇 教諭が何度も「生理ですか?」生徒の心に傷
西日本新聞 2019/5/14(火) 9:45配信
教諭から繰り返しセクハラを受けた−。そんな投稿が取材班に寄せられた。中学生の娘が、ストレスで頭痛や吐き気が止まらなくなり学校に行けなくなったという。性暴力を告発する「#Me Too」運動が広がりを見せる中、教師と生徒の関係では被害が潜在化しやすい現状がある。子どもたちが声を上げやすい体制づくりが学校現場には求められている。
関係者によると、問題は昨春、福岡市立中学校の不登校の生徒が通う教室で起きた。机に伏していた女子生徒に、男性教諭が「生理ですか?」と問いかけた。不快そうにする生徒に「生理は恥ずかしいことじゃない」「娘がいるから分かる」と続けたという。
その後も、気分が悪そうにしている女子生徒複数人に同じ発言を繰り返したといい、うち1人はストレスで教室に行けなくなった。この生徒は「やめてくださいと伝えても、『体調を確認するのが仕事だから』とあっけらかんとしていた。それ以上、何も言えなくなった」と話した。
「配慮を欠いていた」教諭を指導
保護者が「セクハラだ」と抗議した後も、別の女子生徒に対し、「○○さん(下の名前)も随分、女性ぽくなってきましたよ。少女じゃなくてちょっと女性に変わりますね」などと発言していた。
市教育委員会によると、教諭は「体調を確認する目的で尋ねた」「教室に通い始めた頃に比べて成長したことを伝えたかった」と釈明。市教委の担当者は「生徒に寄り添おうと思ってのことだが、発達段階やTPOをわきまえず、配慮を欠いていた」として教諭を指導したという。
文部科学省によると、2017年度にセクハラやわいせつ行為で懲戒処分を受けた教員は210人。内訳は「体に触る」が最多の56人▽「盗撮、のぞき」42人▽「性交」38人▽「キス」16人−と続いた。会話などによるセクハラで処分された教員も11人いた。被害者は「自校の児童生徒」が46%で最多だった。
NPO法人「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク」(東京)の徳永恭子さん(72)は「性的なことは人に相談しにくいのに、相手が先生だとさらに潜在化する。処分件数は氷山の一角にすぎない」と指摘する。
言葉からエスカレートするケースも
言葉からエスカレートするケースもある。高校時代、文化系の部活動をしていた福岡県内の20代女性は、顧問の教諭から「好き」「かわいい」などのメールが繰り返し届いた。「気持ち悪かったけど、部活に支障が出ると思うと『やめて』と言えなかった」。個別指導名目でひざの上に乗せられたり、体を触られたりしたこともあったという。
加害者と被害者の認識がずれているケースも
セクハラは、加害者と被害者の認識がずれているケースが多い。千葉、神奈川の両県教委は毎年、児童生徒にセクハラアンケートをし、結果を教員への指導や研修にも生かしている。
千葉県教委が17年度に公立小中高などの約47万人に行ったアンケートでは、308人が「教職員の言動をセクハラと感じて不快だった」と回答。「性的な話、冗談を言われた」が66人、「必要以上に体に触られた」が64人だった。
04年度から対象を拡大しながら実施しており、担当者は「教員にセクハラの認識がないケースも少なくないが、児童生徒の声を毎回共有することで意識改革になり、未然防止につながっている」と話す。
ただ、こうしたアンケートを行う教育委員会はまだ少ない。回答内容が“加害者”側の教員に知られることなどが懸念されるからだという。文科省は、児童生徒が声を上げやすいようスクールカウンセラーの配置を拡充し、会員制交流サイト(SNS)を活用した相談体制の構築も進めている。徳永さんは「プライバシーに配慮した上で、いじめ調査のように全国アンケートも実施すべきだ」と話した。
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