教育委員が選挙運動 法に抵触か 4月の福岡県新宮町議選

教育委員が選挙運動 法に抵触か 4月の福岡県新宮町議選
西日本新聞 2019/7/16(火) 9:13配信

 4月に行われた福岡県新宮町議選で当選した牧野真紀子氏(63)=6期目=の選挙運動に、同町教育委員会の60代の女性委員が関わっていたことが13日、分かった。教育委員会の設置などを定めた「地方教育行政組織運営法」(地教行法)に抵触する恐れがあり、町教委は近く調査を始める。改選後に議長に選出された牧野氏は「教育委員の地位を利用したわけではないので問題ないと思っていた」と釈明している。

 牧野氏によると、女性は約20年前から選挙運動に関わり、教育委員に就任した2011年以降も支援を続けていた。今回の選挙でも牧野氏と選挙カーに乗り、マイクで支持を呼び掛けたこともあった。投開票日の夜は選挙事務所で万歳し、当選を喜び合った。

 教育委員会は首長から独立した行政組織で、委員は首長が議会の同意を得て任命する特別職公務員。地教行法は、教育長や委員に選挙で候補者や特定の政党を支持、反対するような「積極的な政治運動」を禁止している。2月の文部科学省の通知でも、教職員や委員の選挙運動の禁止を明記している。

 牧野氏は西日本新聞の取材に「女性が委員に就任した後、県選挙管理委員会に問い合わせたが、公選法では問題ないという認識だった」と釈明。女性委員も「地教行法のことは知らなかった」と回答した。

 また、牧野氏が作成した選挙運動費用収支報告書では女性の名前の漢字と住所の一部を誤記していたことも判明。牧野氏は「隠そうとしたのではなく、単純なミス。報告書はすぐに訂正したい」としている。

 女性委員の任期は来年3月末まで。同町教委の宮川優子教育長は「委員は疑念をもたれるような行為は慎むべきだ。話を聞いた上で、対応を検討する」と話した。

地位使わずとも違法

 地方教育行政に詳しい東京大大学院教育学研究科の村上祐介准教授の話 各自治体の教育委員会はそもそも選挙から一定距離を置き、政治的中立性を保ちながら地域の実情に応じた教育を担うという考え方で設立されている。地教行法で教育委員は積極的に政治運動をすることを禁じられており、新宮町議選の事例は委員の地位を利用していなくても違法と言わざるを得ない。現役の教育委員が選挙に関わっているというケースは、全国的にも聞いたことがない。教育委員会の設立趣旨や法律をしっかりと踏まえてほしい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする