アフガニスタンで多発する少年たちへの性暴力─加害者は教師や警察

アフガニスタンで多発する少年たちへの性暴力─加害者は教師や警察
クーリエ・ジャポン 2019/11/28(木) 19:00配信

裕福な男の娯楽に「使われる」少年

アフガニスタンに残る「バチャ・バジ」と呼ばれる文化をご存知だろうか。バチャ・バジとは、翻訳すれば「少年遊び」という意味になる。少年に女の子の服を着せ、大勢の前でダンスを披露させ、そのうえで性奴隷にしてしまう「裕福な男の娯楽」だ。2010年には実態を映したドキュメンタリー映画『The Dancing Boys of Afghanistan』が公開されている。

今年10月、2016年10月から2017年12月にかけ、国連がアフガニスタンで行なった調査を「アルジャジーラ」が報じていた。その結果「バチャ・バジをはじめ、性的虐待を目的に少年が利用されることは一般的で、よくあることだ」と現地の人々の多くが認識していることが判明したという。

大勢の少年が成績と引き換えに虐待を受ける

そんな「バチャ・バジ」がいまなお残っている同国では、教育現場においても少年が性的暴行の標的にされることが多いようだ。

「ニューヨーク・タイムズ」によれば、アフガニスタン・ロガール州にある3つの学校の中だけでも「校内で教師などから、さらに助けを求めて相談した警察などからも性的暴行を受けた」とする少年が165人いたことがわかっている。

「ガーディアン」の報道によると規模はさらに大きく、「アフガニスタンのロガール州で、6つの学校で少なくとも546人の少年が性的に虐待されていたことが判明した」と報じている。

そして「市民社会組織がSNS上で(虐待の様子を映した)動画を100本以上発見したことをきっかけに、被害が明らかになった。同組織は地域内にある他の学校でも調査を進めており、さらに数千人の被害者がいると推測している」と続ける。

少年たちは学校の成績を利用されて被害を受けることが多い。単位と引き換えに、教師は生徒らに性行為をしようと迫るのだ。なかには「ちょっと頼みを聞いてくれれば特別に単位をあげる」と図書室に呼び出され、被害を受けるケースもあるという。

「レイプされたから」家族に見放され

こうした被害を明らかにすることは重要だ。しかし今回の調査結果が公表されたあと、調査に協力した少年が少なくとも7人死亡した。レイプ動画を公開しないことと引き換えに、麻薬の密売などといった違法行為を余儀なくされている少年もいる。

調査を進めた市民社会組織も殺人の脅迫を受け続けているという。同組織のリーダーは「少年たちの被害をロガール州警察に相談したこともあった。それでも対策は打たれなかった」と「ニューヨーク・タイムズ」に語っている。

「警察に相談したらそこでもレイプされた少年もいた」ことも訴えたが、告発は虚偽であるとして取り下げられている。

アフガニスタンで性被害者などの支援をしているライラ・シュワルツによると、レイプされた少年たちは家族に責められ、家から追放されることもあるそうだ。暮らしていた土地を一家で離れることも多い。ひどい場合は殺されることもある。レイプされたという事実は、その家族にとって大きな恥となるからだ。

17歳でレイプ被害にあった少年が「ニューヨーク・タイムズ」の取材を受けている。

「少年は父親に家から追い出されてホームレスになった、と語った。もう学校には通っていないという。そしてこう続けた。“もしまた会うことがあれば、父は僕を殺すだろう”」

性被害に苦しむ男性は世界中に

性被害にあうのは女性ばかりでなく、男性にも多いことは世界で徐々に認知されつつある。

「BBC」の調査によると、イラクでは男性の39%が、女性の33%が言葉によるセクハラを受けたと回答している。さらに男性の20%、女性の17%が性的暴行を経験していた。いずれも男性の被害が上回る結果になっている。

「同国は性被害にあったことを語りたがらない女性が多いこと、そしてイラク刑法により、夫が妻に暴力を振るうことは違法ではないという悲惨な状況にあることを念頭に置いても、驚くべき数字だ」と「BBC」は報じた。

また「ガーディアン」によると、イギリスでも性被害にあう男性は少なくない。被害にあった男性をサポートする「Survivors UK(サバイバーズ・ユーケー)」のメンバーが、次のようなケースを紹介していた。

「ゲイリーは父の暴力から逃れた結果、13歳の頃からホームレスだ。10代にして路上で集団レイプされている。彼は、母は自分でなく父を選んだのだとすすり泣いた……また彼は父から母を守れなかったと悔いている。“母を傷つけることがないよう、僕は父によるレイプを受け入れていた。なのに、父は結局母のこともレイプしていたんだ”」

さらに「クーリエ・ジャポン」でも以前紹介した米軍における性被害と同様に、韓国軍でも多くの男性が性被害にあっていることを「アムネスティー・インターナショナル」が報じていた。「肌が白い」「声が高い」などの理由から「男らしくない」罰としてレイプ被害にあうケースが多いという。

性被害にあった女性たちが世界各地で声をあげはじめている。しかし、性別や年齢、文化や国に関係なく、大勢の男性も被害に苦しんでいることがわかってきている。

どのようなサポートがあれば良いのか、被害を受けた人々の声を拾うにはどうするべきか、考える必要があるだろう。

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