いじめ対策推進法制定6年 東北の関係者「早期発見促す」埼玉・川口市「欠陥あり」論争今も
河北新報 2019/12/9(月) 15:30配信
今秋で施行から6年が経過した「いじめ防止対策推進法」に関し、いじめの定義などを巡る論争が続いている。全国では被害者と係争中の自治体が裁判で「法に欠陥がある」と主張したケースも。東北ではいじめの早期発見を促す法の趣旨を支持する意見がある一方、認知件数の増加に伴う教育現場への支援を求める声が上がっている。(青森総局・荘司結有)
同法は2013年9月に施行された。一定の関係にある児童生徒の行為で、対象者が心身の苦痛を感じる状態を「いじめ」と定義。心身に重い被害を受けるなどした場合に学校の調査などを義務付ける。
公然と異論を唱えたのは埼玉県川口市。中学校の元男子生徒がいじめで暴力を受けたとして市に損害賠償を求めた訴訟で9月、同法の問題性を指摘した。
いじめの定義について「苦痛を受けたと声高に非難する者が被害者になり、非難しない者が加害者にされる」と指摘。「教員や保護者らの正しい理解を困難にさせる」「教育現場に与える看過しがたい欠陥を持つ」と主張した。
同法は大津市で11年に起きた中学生のいじめ自殺を機に作られた。再発防止を目的とした法への異議に、青森市いじめ防止対策審議会で会長を務めた野村武司弁護士(埼玉弁護士会)は「『法の欠陥』と言うのは趣旨を理解しているとは思えない」と指摘する。
市いじめ防止対策審議会は、について「いじめが主因」と結論付けた。野村氏は「教育現場が手を尽くしても発見できなかった結果、法律でいじめが広く定義されるに至った」との見方を示す。
文部科学省の18年度児童生徒問題行動・不登校調査によると、東北6県と仙台市の小中高校、特別支援学校のいじめ認知件数は計5万5548件。17年度から7732件増えた。
いじめへの対応に追われる学校関係者は、定義に基づく認知件数の増加と向き合う。青森県内の小学校に勤務する40代の女性教員は「昔なら当人同士で解決させたけんかも、今は全てに教員が介入しなければならない」と内実を明かす。
宮城県教委のいじめ防止対策調査委で委員長を務めた藤代正倫・元宮城教育大特任教授は「ささいな事案も過小評価せず、いじめとして捉えることが大切だ。多忙化する教員を支える体制も必要」と指摘する。