サッカー強豪「神村学園」を保護者ら提訴 生徒が置かれた通信制の“劣悪な環境”

サッカー強豪「神村学園」を保護者ら提訴 生徒が置かれた通信制の“劣悪な環境”
デイリー新潮 2020/2/1(土) 8:01配信

強豪「神村学園」がレッドカードの淡路「サッカービジネス」(1/2)

 世間は受験シーズンの真っ只中。少子化で、今や学校は入学者を集めようと必死である。功を焦った指導者が、教育を忘れてビジネスに猛進すればどうなるか。サッカー強豪校が訴えられた裁判沙汰は、子や孫を持つ世代にとって、決して対岸の火事ではないのだ。

 ***

 サッカー選手とユーチューバー。ここ数年、男児が憧れる職業の上位に必ず並ぶのが、この二つ。全国の小学生が対象の、日本ファイナンシャルプランナーズ協会による最新(2019年4月発表)の「将来なりたい職業」ランキングでも、2位が「サッカー選手・監督など」で、6位は「ユーチューバー」となっているのだ。

 憧れの肩書を二つながら兼ね備える男に学べると聞けば、まだ世事に疎いサッカー少年たちはきっと羨望の眼差しを向けるに違いない。この学園に入学するまでは……。

 学校法人・神村学園高等部が開設した「淡路島学習センター」(兵庫県淡路市)は、プロサッカー選手を育成することを目的とした全寮制の通信制教育施設だ。関西メディアを中心に、新たな取り組みだとして持て囃されたこともあったが、昨年末に産経新聞がある騒動を報じて以降、評判は一変してしまう。

 19年4月に入学したセンター1期生22人の約半数にあたる10人が、8月末までに自主退学。12月27日には、元生徒とその保護者18人が学園とセンターを相手取り、総額2131万円の損害賠償を求めて松江地裁益田支部に提訴したのだ。開設から半年を経ずして生徒が“集団脱走”する異常事態はなぜ起きたのか。そのワケを知る前に、被告となった学園について説明しよう。

 創立60年超の神村学園は、全国高等学校サッカー選手権大会に鹿児島県代表として3年連続出場。女子サッカー部も今冬の全国大会で準優勝、過去2回の優勝を誇る。野球部も甲子園の出場経験があるスポーツ強豪校として知られる。

 問題となった淡路島のセンターは、神村学園の“分校”として、サッカーに専念できる教育が最大のセールスポイントだ。そのセンター長として、本校から業務委託の形で指名されたのが、裁判で学園と共に被告となった上船(うえふね)利徳総監督である。弱冠27歳の彼は学園OBで、東京国際大を経てドイツのプロチームと契約するが、ケガで現役を引退。帰国後は明大サッカー部などでコーチを務めた。

 指導者としてサッカー界の頂点を極めたいと、過去のインタビューでは「最年少の日本代表監督になる」と豪語する傍ら、SNSでは「起業家」「ユーチューバー」と称し、サッカー少年たちにアピールしている。

「本当に上船監督は口が上手くてね。子供たちや保護者の前で、『淡路は間違いなく、日本で最高の練習環境』だと話していましたから」

 とは、原告の元生徒とその保護者たちを束ねる島根県在住の男性(35)だ。

「進路に迷う私たちに、彼は『午前中はサッカーの練習、昼からしっかり勉強をします』とハッキリ言いました。全日制の高校と同じ学習内容を教えて貰えるのかと尋ねたら、『少人数制だからマンツーマンで苦手分野の科目を伸ばせる。心配しなくて大丈夫』と自信満々に言い切ったのです」

 しかし、いざ学校生活が始まると、それらが“口約束”だったことが露見する。

劣悪な環境

 この男性が続けて話す。

「息子曰く、朝8時に練習が始まって、昼食を挟んで18時くらいまでサッカー漬けの毎日で、入学後は学習の時間など一切なかった。たった一度だけ、6月に寮の部屋でレポートを書かされたことがあって、その時に初めて教科書が配られたけど、書き終わるとすぐに回収されてしまった。上船監督は『勉強しなくていい』と言い放ったそうです」

 センターには教室などを備えた校舎はなく、生徒は寮と練習場を往復する日々。学びの場が与えられていなかったと、この男性は憤る。

「事前の見学会では、保護者を寮に案内して学習スペースを設けると言っていたのに、実際の建物はそれとは違う建物で、民間施設を借り上げた所でした」

 訴状には、1期生22名全員が寮に入ったが、1部屋に12名、残る1部屋に10名が2段ベッドで起居を共にしていたとある。特に12人部屋はベッドで部屋が埋まり、人が1人やっと通ることが可能な程度の空きスペースしかなかった。風呂もトイレも家庭用サイズのものが一つだけ。到底、全員が時間内に入浴できず、シャワーで済ます子もいた。劣悪な環境ゆえ胃腸炎が流行したなどと書かれているのだ。

 寮は賄い付きだったが、先の男性はこうも言う。

「契約した食堂から3食提供されると聞かされ、現地で試食した料理は、カツ煮がメインでサラダに小鉢もついて美味しいし、量もかなりあって、保護者たちは『これはすごい』と驚いた。けれど、入学直前にセンターは、朝と昼は寮母が作ると前言撤回し、その女性も折り合いが悪くなって1週間で辞め、最終的にはケータリング業者が提供する形になった。見学会の時とは質も量もまったく異なる貧弱なメニューだったのです」

 その一例が掲載の写真だが、食べ盛りのスポーツ少年たちにとっては明らかに物足りない内容なのだ。

 原告の一人である元生徒の母親(42)は、

「裁判を起こした元生徒9人のうち、我が子を含めて8人の体重が栄養不足で減っていたんです。最大10キロ近く体重が落ちた子供もいました。センターは糖質制限を子供に課したけど、ハチミツは認めていた。それで牛乳にハチミツを混ぜて飲み空腹を凌いでいました」

 (2)へつづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする