校長からわいせつ被害 女性教諭、言えず苦しんだ1年半「被害を言葉にするのが本当に嫌だった」
京都新聞 2020/5/13(水) 11:30配信
部下だった女性教諭にわいせつな行為をしたとして、滋賀県警捜査1課と草津署は12日、強制わいせつの疑いで、滋賀県草津市立の小学校元校長で団体職員の男(59)=滋賀県湖南市=を逮捕した。捜査関係者によると、元校長は容疑を否認しているという。
逮捕容疑は、昨年4月27日午前11時半ごろと、7月22日午後3時半ごろ、同小で女性教諭=当時20代=の胸を触ったり、キスをするなどした疑い。
県教育委員会は今年2月、逮捕容疑の2件を含む5件の行為をこの女性教諭への「セクハラ行為」とし、元校長を停職6カ月の懲戒処分とした。県教委によると、5件の事実関係を認め、同月に依願退職したという。
■ミスし「貸しやで」とハグ、エスカレート
元校長から強制わいせつの被害を受けた女性教諭が、京都新聞社の取材に応じ、被害を周囲に訴えられるようになるまでの葛藤を打ち明けた。職場のトップと部下の関係で続いたわいせつ行為。当初は波風を立てたくない思いもあり、「(被害認識は)私の自意識過剰なのか」と、正常な判断ができない状態に追い込まれたという。
元校長は、女性の仕事上のミスを対処すると、「貸しやで」と言い、ハグを求めるようになったという。次第に手を握ったり、職員室などで胸を触ったりするなど、行為はエスカレートしたという。
被害を訴えたら同僚に知られるかもしれない。「『あの子もあいまいな対応をしていた』と責められるのではないか」。相手は校長。「『私の自意識過剰で大ごとに受け取っているだけかもしれない』と心をねじ曲げていた」
1年半近く、周囲に訴えられない日々が続いた。「被害を言葉にするのが本当に嫌だった。被害をもう1回再確認してしまうから」と吐露する。身内に被害を知られることへの強い抵抗感もあった。
離れた場所にいる親しい元同僚たちに、かろうじて被害を口にすることができた。同僚たちは親身に相談に乗り、「動かなければならない」と繰り返し説得し、背中を押してくれた。
被害を周囲に訴え、自責の気持ちを取り除くのには十分なサポートと時間が必要だった。「今は『ひどいことだったんだよ』と言って支えてくれる人がいるから、自信を持って闘いたいと思える」。同じような性被害を受けている人に、「なかなか踏み出せないと思うが、まず誰かに相談してほしい」と訴える。
■専門家「セカンドレイプに遭い、孤立してしまうケースも」
性被害に詳しい「ウィメンズカウンセリング京都」の井上摩耶子代表の話 性犯罪の被害者は恥辱感や自責感を抱き、被害を矮小(わいしょう)化しようとする特徴があり、尊厳を取り戻すための心のケアが必要だ。時間がたっても被害に遭った時の心理状態に戻ってしまうことがあり、長期的なサポートも必要になる。特に職場での被害を公にする場合、周囲の無理解からセカンドレイプに遭い、孤立してしまうケースもあり、働き続けたい被害者の精神的負担は大きい。ジェンダーの視点に立った教育の普及が必要で、性被害を訴えやすい社会的な土壌をつくる必要がある。