コロナ禍でも発覚続く教員セクハラ 驚愕の防止マニュアルも
NEWS ポストセブン 2020/6/8(月) 7:05配信
全国各地の小中高校で授業が再開されている。コロナ対策を講じながらとはいえ、保護者や関係者の不安は尽きない。そんな教育現場にはもう一つ見過ごせない大きな懸念材料がある。教職員によるわいせつ行為だ。2018年度は全国で282人の公立学校教職員がわいせつ行為等で懲戒処分(訓告等を含む)を受けている。今年に入ってからも処分が次々と明らかになっている。一体どうなっているのか。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
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5月27日に開かれた第2回千葉県教育委員会会議で「令和元年度セクシュアル・ハラスメント及び体罰に関する実態調査」の結果が報告された。調査はアンケートで、実施期間は令和元年12月2日から令和2年1月31日まで。回答者数は児童・生徒45万9478人、教職員1万1596人。
セクハラと感じたとの回答はあわせて588人で、前年度より164人増加した。高校生209人(うち男子47人)、中学生276人(同103人)、小学生96人(同42人)だった。
セクハラと感じて不快だったと回答した項目で多いのは、「性的な話・冗談等を言われた」「必要以上に身体を触られた」といったもの。具体的な回答では「身体をなでるように見られる」「部活動の大会で男性顧問が女子更衣室に入ってきた」「先生方からのボディタッチが多い」などが寄せられた。
教職員は91人(同18人)がセクハラと感じて不快だったと回答。「容姿・年齢・結婚等を話題にされた」「性的な話・冗談等を言われたりメール等を送られた」が目立つ。教育現場でのセクハラの一端が浮かび上がった形だ。
東京都の事情はどうか。都教育庁は3月になってから「教職員の服務事故について」という発表を3回行った。服務事故とは体罰、わいせつ、公金横領などの不祥事で、教育庁の発表リリースには、処分者の身分、処分内容、処分理由が記載されている。
3月分は3日、13日、27日に発表があり、全部で22件の処分が明らかにされたが、このうちわいせつ・セクハラ行為とみられるものが6件、ストーカー行為が1件、盗撮が1件、SNSによる脅迫行為が1件ある。
具体例をみてみよう。懲戒免職になった多摩市の30歳男性教諭(実名公表)の処分理由は、「平成31年4月29日午後11時30分頃、路上を通行中の女性の背後から、左手で同女性の口を押さえ付けるとともに、右手で同女性の右乳房を着衣の上からもんだ」というもの。
区部の小学校に勤務していた55歳の校長は、「勤務校女性教諭に対して断続的にメッセージを送信し、不快感、恐怖感を与えた」「30年6月16日頃、電車内において同教諭の手を握り、不快感及び恐怖感を与えるなどした」として減給10分の1/6か月)の処分が下された。
このほか「同校児童にズボンを下ろさせて下半身を出させるわいせつ行為等を行った」34歳小学校主任教諭(懲戒免職)や、「生徒と二人きりの状況で、生徒を抱きしめるなどした」37歳の高校教諭(停職3か月)など、教育者の行為とは思えない事例ばかりだ。
次は埼玉県。県教育局は3月23日、6件の懲戒処分を公表。3件がわいせつ行為で、36歳の高校教諭、29歳の小学校教諭、54歳の中学校教諭の3人が免職となった。いずれもSNSで知り合った女子生徒に現金を渡して「みだらな行為を行った」というもの。36歳教諭の相手は県外在住の女子中学生だった。
アンケート結果が明らかになった千葉県では、3月11日に県教育委員会が4件の事案で7人の教諭らの懲戒処分を発表した。県立高校の54歳教諭は部活動の女子生徒1人に対し、車の中や遠征宿泊先でマッサージと称して体を触らせたり、相手の体を触ったという。セクハラ行為を調べる校内のアンケートで発覚した。千葉県の令和元年度の懲戒処分件数は30件(うち監督責任9件)に達し、前年度の20件(同4件)を大きく上回った。
◆コロナ休校中にわいせつ行為で逮捕された教員も
3月以降新型コロナウイルスの感染拡大で全国的に小中高は休校になっていたが、その間にも教員のわいせつ行為は止まらなかった。
滋賀県教育委員会が5月27日付で懲戒免職処分とした県立高校の男性教員は、昨年10月下旬から今年3月上旬にかけて勤務先の高校の女子生徒をカラオケなどに7回呼び出し、キスをするなどのわいせつ行為を行っていたという。このうち1回は休校中の出来事だった。
北海道では5月28日、登別市の中高一貫校の54歳の副校長が傷害の疑いで逮捕された。3月下旬、自家用車に同乗していた30代の知人女性に睡眠導入剤を飲ませた意識をもうろうとさせた疑い。副校長は容疑を認めているという。
道警はわいせつ目的や怨恨など動機を調べている。副校長は、事件直前の3月23日発行の学校通信に「時間を有効に活用しよう!」と寄稿、生徒たちを諭していたが、自分は何をやっているのか。
わいせつ行為で処分されるのは男性教員だけではない。岡山県教育委員会は3月19日、公立中学校に勤務する20代の女性教諭が、昨年5月から6月にかけ勤務先の中学校の男子生徒に自宅でキスなどのわいせつ行為を複数回行ったとして懲戒免職処分にしたことを発表した。
女性教諭は「SNSでのやり取りを通じて好意を持つようになった」と話していたという。昨年12月女性教諭が「警察から調べを受けている」と学校に報告したことから発覚した。岡山県では教育庁が3月19日に「わいせつ行為等根絶に向けた岡山県公立学校教職員行動指針」の策定を発表。同じ日に処分を公表する事態となった。
◆全国で増える教職員のハレンチ行為
では、全国的な状況はどうなっているのか。文部科学省の「平成30年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」(令和元年12月24日公表)で詳細をみてみよう。
わいせつ行為等で懲戒処分等を受けた教育職員は全国で282人(男性276人 女性6人)おり、在職者数に占める割合は0.03%。前年度の210人から大幅に増加した。免職は163人だった。処分者の世代分布は30代=82人、50代以上76人、20代=71人、40代=53人で、学校種別では高等学校の101人が最多だ。
都道府県別では、(1)東京都33人(2)大阪府〈政令指定都市の大阪市、堺市を含む〉28人(3)福岡県〈福岡市、北九州市を含む〉、兵庫県(神戸市を含む)の各19人が上位となっている。一方、岩手県、秋田県、鳥取県、鹿児島県、沖縄県の5県は処分者ゼロとなっている。
わいせつ行為等の内容は、「体に触る」が最も多く89人。「盗撮・のぞき」が48人、「性交」41人、「接吻」27人などと続く。行為が行われた場所で目に付くのは「保健室、生徒指導室等」40人、「教室」28人、「職員室」8人、「運動場、体育館、プール等」3人と、学校敷地内が全体の3割近くを占めていることだ。
行為をした相手は「自校の児童」25人、「自校の生徒」99人で計44%が勤務している学校の生徒・児童。自校の教職員も41人(14.5%)いた。教育者が教育現場で教え子にハレンチ行為をしている実態にはあ然とさせられてしまう。
◆不祥事防止チェックリストの驚くべき中身
もちろん、こうした由々しき事態を前に各自治体の教育委員会などが手をこまねいているわけではない。
近年、不祥事が相次いでいる埼玉県では、平成31年3月に「教職員の皆さんへ 教育長緊急メッセージ」を公表。教育長は「県民の皆様の信頼を失い続けているこの状況は、埼玉教育にとって非常事態です」と指摘し、「教職員の不祥事は無くさなければいけません。そのためには、教職員の皆さん全員の理解と協力が必要です」と訴えた。
その後、令和元年11月には「わいせつ行為等根絶 行動指針」を作成。その中で(1)児童・生徒と絶対に交際してはいけません(2)電子メールやSNSを使った児童・生徒との私的な連絡は、絶対に行ってはいけません──などと戒めている。
子ども向けのメッセージではない。大人である教職員向けのメッセージである。こうした取り組みにもかかわらず、今年3月にはSNSを使用した3人の教諭による未成年相手のわいせつ処分が明らかになった。馬耳東風か。
神奈川県教育員会の不祥事防止リーフレット「築き上げた信頼が一瞬で 〜50代の教員のあなたへ〜」(平成30年7月作成、20代向けもある)は、実際に起こった不祥事(生徒へのわいせつ行為で懲戒免職となり、教員免許が失効した50代の高校教諭)を参考にしたストーリーを紹介し、「あなたならどうするか考えてみましょう」と呼びかけ、最後に「日常点検チェックリスト〜不祥事防止のための30項目」が記載されている。わいせつ・セクハラ関連は10項目で、署名欄まである。
チェックリストの内容はたとえば、こんな感じだ。
・公務上の必要もなく、児童・生徒の写真や動画を撮影していない。
・児童・生徒とSNSでやり取りすることは絶対禁止されていることを知っている。
・児童・生徒の方や髪・背中などを触ったり、必要以上に身体や顔を近づけたりしていない。
現場の教員たちはこのチェックリストに記入し、学校(教育委員会)に提出したのだろうか。
50代といえば多くは管理職ではないだろうか。校長、教頭も含まれているだろう。そんな教育者に向けたメッセージ、チェックリストを見るだけで、やりきれなくなってしまう。そこまで教育現場は劣化しているというのだろうか。
もちろん、こうしたわいせつ不祥事で処分される教職員は全体からすればごくごく一部に過ぎない。平成30年の処分者の割合は全体の0.03%だから1万人に3人でしかない。残り9997人の教職員の方々にとっては迷惑千万な話だろう。
とはいえ、生徒向けとしか思えないような行動指針やチェックリストが存在するという事実が、いまの教育界の現状を物語っているのも事実である。ようやく学校が再開されたばかり。今年こそはこうした不祥事が一掃されることを願ってやまない。