教職員の不祥事相次ぐ 生徒にわいせつ、飲酒運転事故… 滋賀県、3カ月で懲戒8件

教職員の不祥事相次ぐ 生徒にわいせつ、飲酒運転事故… 滋賀県、3カ月で懲戒8件
京都新聞 2020/7/13(月) 11:00配信

 今年に入り、滋賀県の教職員の懲戒処分が相次いでいる。生徒へのわいせつ行為や飲酒運転の事故などで、処分件数は2月から3カ月余りで、昨年1年間の3件を大幅に上回る8件に達した。事態を重くみた県教育委員会は注意喚起の通知でなく、臨時の研修会を県立学校長や市町教委の管理職向けに開き、学校現場に再発防止の徹底を求めている。

 県教委は2月以降、飲酒運転に関して県立高事務職員ら3人、部下の教員や生徒に対するわいせつ行為で県立高教諭ら2人、入試の願書の出願ミスで県立高教諭2人、自校の生徒と交際した県立高教諭1人の計8人に、免職や停職の懲戒処分を行った。

 県教委では、個人情報流出防止指針やハラスメント防止指針、2017年からは児童生徒に対するわいせつやセクハラ行為防止のチェックシート作成などで、不祥事防止を図っている。

 しかし今年の懲戒処分の急増を受け、県教委は6月5日に市町教委の人事担当の管理職向けに、9日には県立学校長向けの研修会を開催。不祥事の防止指針や懲戒処分事案を掲載した新聞記事のコピーなどを提示し、校内や市町内の学校での研修実施を求めた。

 不祥事防止について、福永忠克教育長は、同月17日の定例会見で「各県立学校の校長、管理職、市町の教育委員会の管理職にしっかりと伝え、各現場で研修によって見識を高めてほしい」と述べた。

■研修で再発防止図るも実効性に疑問の声

 相次ぐ不祥事に、県教育委員会は臨時の研修会などで再発防止を図るが、現場の教員からは「実効性のない研修」と疑問視する声も上がる。専門家は「外部の目による改善が必要」と指摘する。

 ある教諭が勤務する県立高でも6月中旬、校長から教職員の懲戒処分が相次いでいるとの説明があった。校長は「研修をするよう指示があった」としながらも、コロナ禍での学校再開直後で業務がかさみ時間がとれないことを理由に、「この説明をもって研修に代える」と話したという。

 教諭がこれまで赴任した学校でも、不祥事がある度、研修として懲戒処分を報道した新聞記事のコピーと県教委の通知を配布されて10分程の説明を受ける程度だった。わいせつやセクハラ行為防止のチェックシートも、これまで1回しか使ったことがない。「県教委が研修を指示するのは、起きてしまった不祥事に対しアクションを起こしたというアリバイづくりのように感じる」と打ち明ける。

 県内の教職員の懲戒処分件数は、昨年が3件、2018年10件、17年8件、16年6件、15年10件と増減を繰り返している。6月8日の県議会教育・文化スポーツ委員会では、県議からの追及を受け、県教委教職員課は「研修を継続的に年数回行っているが、形骸化しているかもしれない」と体制の甘さを認めた。

 5月には草津市内の公立小学校の元校長が女性教諭に対する強制わいせつの疑いで逮捕された。草津市教委は研修体制の見直しも進めており、これまで県教委の方針にのっとって主に市教委で行ってきた研修を、今後は市長部局と共に行う。

 同志社大の太田肇教授(組織論)は「学校や教育委員会という閉鎖的な仲間うちで処分や研修が行われていると、慣れが生じて危機意識が欠けてしまう可能性がある。形式的な内部だけの研修で終わらせず、外からの観点を入れ、組織そのものにメスを入れることも考える必要がある。不祥事の原因を分析し、何が問題かを教員にきちんと理解してもらうべきだ」と話す。

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