学術会議よりヤバい「孔子学院」について米シンクタンクが暴露した
現代ビジネス 2020/11/1(日) 6:31配信
「中国との関係を言うなら、日本学術会議ではなく孔子学院だろう。米国の報告書も指摘しているじゃないか。中国からの留学生はもちろん、日本の学生も数多く関わっている」
政府関係者が、そう語る。米国の有力シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が今年7月、米国務省の支援を受けて作成した「日本における中国の影響力(China’s Influence in Japan)」と題する報告書を指してのことだ。
同報告書は、二階俊博自民党幹事長と今井尚哉前首相補佐官を名指しのうえ、「親中派」としたことで話題になったが、今回は日本学術会議との関係から新たに注目されつつある。
これまで日本では報じられてこなかったことなども含んでいるため、この報告書の該当部分を改めて紹介しておこう。以下がその翻訳である。読みやすいように適宜改行を行っている。〈〉内は筆者注。
《孔子学院は、海外で教育支援プログラムを実施している代表的な機関としてもっともよく知られているが、中国共産党中央統一戦線工作部をはじめ、〈国外で〉影響力のある活動を行っている部門のネットワーク下に置かれている。〈ちなみに〉中央統一戦線工作部は、中国共産党の一部門で、エリートを含む党外や国外の人々に影響を与えることを目的としている。
同学院は、公式には(中国共産党との)友好の促進のためにあるとされているが、評論家や複数のインタビューによると、親切めかして実は悪意あるプログラムを潜在的に刷り込むことのよって、中国共産党のプロパガンダを広めたり、リベラルな言論を抑圧したり、情報収集に利用されたりする可能性があるという。
2004年に韓国で最初の孔子学院が開設されて以来、2018年の時点では全世界で548か所が設置されており、2020年までに1000か所を目指すとしている。しかしながら、2020年6月現在、漢語事務局〈孔子学院本部〉のウェブサイトには、〈同学院への〉綿密な調査が行われて閉鎖されることが増えたため、541施設しかリストアップされていない。
孔子学院は、中華人民共和国教育部の傘下にある中国語協議会国際事務局(漢語事務局)の支援を受けて中国語教室を開いている。漢語事務局は、中国の大学で中国語や中国文化を学ぶ外国人に教科書〈の提供〉や教師〈の派遣〉、奨学金などの経済的支援も行っており、2009年に奨学金制度が作られて以降、166か国の国々からやってきた約5万人の学生が奨学金を受け取っている。また、孔子学院は料理、太極拳、鍼灸、書道などの文化教室も提供している。
日本では、2019年5月に山梨県甲府市にある山梨学院大学に一番新しい孔子学院が開校された。2005年10月に北京大学との提携のうえ京都の名門・立命館大学で最初に開校されて以来、15か所目となった。日本で孔子学院を開校するには、大学と漢語事務局との間で契約を結ぶ必要があるものの、同学院に対して関心を示してこなかった文部科学省の認可は不要だ。
2019年2月の国会で自民党の杉田水脈議員が孔子学院について質問した際、文部科学省の義本博司高等教育局長はウェブサイトからの統計を読み上げただけであった。孔子学院は、中国の提携大学からの資金提供や学生の入学者数を増やすことで日本の大学を惹きつけている。日本の若年層の人口が減少しているなか、非常にありがたいオファーであるからだ。
日本国外では、スパイ活動や中国資金への過度の依存に対する政治的な懸念の高まっており、孔子学院は相次いで閉鎖に追い込まれている。孔子学院の主要な展開地域である米国では、2018年以降、少なくとも15カ所が閉鎖されている。2018年2月、FBI〈連邦捜査局〉のクリストファー・レイ長官は上院聴聞会で、同局が孔子学院を調査していると発言した。
オーストラリアのニューサウスウェールズ州は2019年8月、中国の悪質な影響力を懸念して、13か所ある孔子学院をすべて閉鎖すると発表。ベルギーの孔子学院は、院長がスパイ容疑で告発され、欧州連合への入国を8年間禁止されたことを受けて閉鎖した。
しかし、日本では閉鎖された孔子学院は一つもない。2014年に広島で孔子教室(孔子学院の小中学校に相当)が閉鎖されたが、この閉鎖は政治的な懸念というよりも需要がなかったためだ。日本の新聞は孔子学院の閉鎖についてまったく報じていないが、専門家らは最終的には政治的圧力により閉鎖されるものもあるかもしれないと推測している。
東京国際大学の村井友秀によると、日本の国民やメディアが孔子学院を詳しく調査することが増えてきているという。村井氏を含む専門家らは、われわれにこう語った。孔子学院の目的を疑う国民が増えてきており、多くの人が孔子学院が中国のプロパガンダや情報収集に従事しているとみなしていると。
村井は、資金繰りに窮する日本の大学は経済的な理由で孔子学院を歓迎せざるを得ないことが多いと指摘する。しかし、産経新聞などの保守的なメディアやそれに共鳴するひとたちは孔子学院に批判的であり、同学院を閉鎖するよう大学に圧力をかけている。村井は、日本の大学は一般の人々に同調しない形で政治化してしまったとの見方も示している。すなわち、大学はいまだ左翼、マルクス思想に支配されているのに対し、国民はもっと右翼的であり、愛国的であると。大学は、このまま中国共産党と日本の納税者の双方から支援を受け続けていくとすれば、やがて行き詰まってしまうかもしれない。
日本にある15の孔子学院はすべて私立大学に設置されている。つまり、日本のトップ大学である東京大学をはじめ、国公立大学傘下には置かれていない。国公立大学は原則として孔子学院を受け入れたくないのではないかと示唆する専門家もいる。
2007年4月、日本の名門私立大学のひとつである早稲田大学は、北京大学と提携し、若手研究者を育成して共同研究を進め、研究論文を発表することを目的とした世界初の研究指向型の孔子学院を設立した。現在、早稲田には2775名の中国人学生(留学生の半数以上)が在籍しているが、1万人以上の日本人学生の一定数が孔子学院を介して中国語の授業を受けている。
日本でも、孔子学院に対する国際的なキャンペーンが動き出している。たとえば、2017年11月、ワシントンD.C.を拠点とする「Citizen Power Initiatives for China〈中国のための市民権イニシアティブ〉」が東京で開催した「Interethnic/Interfaith Leadership Conference〈人種・宗教を問わない首脳会議〉」の場で、孔子学院についてのカナダのドキュメンタリー映画「In the Name of Confucius〈孔子学院という名のもとに〉」が上映された。
会議には約60人の国際的な人権活動家が招かれ、トランプ〈大統領の〉参謀を務めたスティーブ・バノンをはじめ、公共政策にかかわる当局者による講演が行われた。同映画のウェブサイトによると、日本では孔子学院をめぐる論争が公にされたのはたった一度だけだという。 2010年、大阪産業大学の理事が漢語事務局をスパイ機関と呼び、キャンパス内で中国人学生から反発を受けたのち、謝罪して辞職した。この話は、〈中国共産党の機関紙である〉人民日報に掲載された。おそらくは、今後の批判を抑止する目的で》
報告書は、多くの国民やメディアが「友好」を名分とした中国の工作を警戒しているのに対し、大学側は資金や生徒数の面で中国に頼っているため、数多くの日本人学生が工作のターゲットにされているのではないか、と懸念を示しているのである。
前出の政府関係者は、警鐘を鳴らす。
「文科省は『学術スパイ』対策などに当たる経済安保担当ポストを設け、また外務省も大学への留学生や研究者らに発給するビザの審査を厳格化するとしているが、いったいどれだけの効果があるものか。しかも、孔子学院の日本の学生へのアプローチは野放し状態だ。何らかの対応が必要だろう」
時任 兼作(ジャーナリスト)