海星生徒自殺 「突然死」追認報道 長崎県は「積極的」否定

海星生徒自殺 「突然死」追認報道 長崎県は「積極的」否定
長崎新聞 2020/11/19(木) 11:12配信

 2017年4月、長崎市の2年の男子生徒=当時(16)=が自殺した問題で、について、県は18日に会見を開き、「学校の立場を積極的に正しいと追認したとは思わない」との見解を明らかにした。
 男子生徒の自殺を巡っては、学校側が設置した第三者委員会が「同級生のいじめが主要因」と結論付けたが、学校側は受け入れていない。
 県によると、学校側が遺族に「転校」も提案しており、当時の県の担当者は「転校」は事実に反するため適切ではないと指導。また担当者は「ケースによっては『突然死』ということはあるかもしれない」という趣旨の発言もしたという。会見した県幹部は「『転校はおかしい』と強調するあまり、『突然死』という表現を少し軽んじてしまったのではないか」と述べた。
 県は「担当者の発言が適切ではなく誤解を与えた。ご遺族にお詫び申し上げる」としている。

 2017年4月、長崎市の私立海星高2年の男子生徒=当時(16)=が自殺した問題で、学校側が当初、遺族にいじめを認めていたことが18日、分かった。武川真一郎校長が教頭だった翌5月、被害を訴えた生徒の手記を読んだ際の「これはいじめ」との発言を、遺族が録音していた。学校側はその後、態度を変え、自殺との因果関係を否定し続けている。
 遺族は17年5月6日、武川氏と面会した際に生徒の手記のコピーを示し、見解を尋ねた。録音データによると、武川氏は「これはいじめでしょうね」などと発言。その場で在校生に言動に関して指導する方針を示したが、後に消極的な姿勢に転じた。

 2017年4月、長崎市の私立海星高2年の男子生徒=当時(16)=がいじめを苦に自殺したとされる問題で、学校側が遺族に「突然死ということにしないか」と提案した上、私立校を監督する長崎県学事振興課も「突然死までは許せる」と追認していたことが17日、遺族側への取材で分かった。国のガイドラインは自殺の偽装を認めておらず違反する疑いがある。
 学校設置の第三者委員会が翌18年11月19日に「いじめが自死の主たる要因」とする報告書をまとめたが、学校側が受け入れないまま2年が近づく。学校側は今月12日を期限とした共同通信の質問状に回答せず、遺族は事態進展を切望している。

 2017年4月20日に自殺した長崎市の私立海星高2年の男子生徒=当時(16)=の両親が19日、命日を前に現場の公園で献花した。学校の第三者委員会が「自死の主たる要因はいじめ」と結論付けた報告書を海星高は受け入れておらず、両親は「認識を改め、再発防止策を講じてほしい」と強調した。
 母親(48)は毎年母の日に、男子生徒からカーネーションを贈られていた。この日両親は前日に買ったカーネーションを、生徒が亡くなった現場に供えた。手を合わせた母親は「争いを好まない優しい子だった。息子の死を無駄にしたくないだけなのに、なぜ学校は認めないのか」と寂しそうに語った。

 2017年4月、長崎県長崎市の海星高2年の男子生徒=当時(16)=が自殺した問題について、高校側がいじめ防止対策推進法に基づき設置した第三者委員会は2018年11月、「いじめが自殺の主要因」との調査結果をまとめた。しかし、高校側が受け入れない状況が1年以上続き、着地点は見えないままだ。同法や制度に課題はないのか。学校での事件・事故の対応に詳しい京都精華大人文学部の住友剛教授(教育学)に聞いた。(後略)

 2017年4月に長崎市の私立高2年だった男子生徒=当時(16)=が自殺した主要因を「いじめ」と結論付けた第三者委員会の調査報告書が公表されない事態が続いている。文部科学省はガイドラインで「特段の支障がなければ公表することが望ましい」としており、今年8月には県が学校側に公表を促した。それでも学校側の対応は変わらず、公表を望む両親は苦痛を強いられている。(後略)

 2017年4月、長崎市の私立海星高の男子生徒=当時(16)=が市内の公園で自殺した。この問題を巡り、いじめ防止対策推進法に基づいて設置された第三者委員会は、同級生からのいじめを主要因とした調査結果をまとめた。遺族側は受け入れたが、海星高側が受け入れを拒否。そのまま時間が経過し、いじめた側の同級生らのいる学年は卒業。行政は踏み込んだ対応ができないままだ。なぜこんなことになっているのか。私立校が事実上「聖域」となっている現状を追った。

 ▽「突然死ということに」 学校側提案に不信感

 母親(47)によると、男子生徒は自殺直前まで変わった様子はなかった。前日も宿題をこなし、当日はいつもどおり登校。車で学校へ送ったのが最後の別れになった。死後、自宅で見つかった手記には同級生に「さんざんディスられた(侮辱された)」などと記されていた。「悩みに気付けなかったのは親の責任もある。悔やみきれない」。遺族の苦しみの深さは想像を絶する。

 遺族によると、遺体発見の約1週間後、悲しみに暮れる遺族に対して、海星高側は驚くべき提案をしてきた。「突然死ということにした方が良いのではないか」「他の生徒には急に転校したと説明することもできる」。不信感を持った遺族は、真相を明らかにするために第三者委員会を設置することを海星高側に要請した。学校側も受け入れ、17年7月、いじめ防止対策推進法を踏まえた文部科学省策定の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に基づき、弁護士ら5人による第三者委を設置して原因の調査に乗り出した。

 第三者委は調査で、生徒や教職員に聞き取りやアンケートなどを実施した。設置から約1年4カ月後の18年11月、授業中に男子生徒のおなかが鳴ることへのからかいがあったなどと認め「自殺の主たる要因は同級生からのいじめ」とする報告書をまとめた。

 にもかかわらず、海星高側は「具体的な事実を示していない」としてことし1月、報告書を受け入れない意向を遺族に通知した。災害共済給付制度を運営する独立行政法人日本スポーツ振興センターへの死亡見舞金の申請も拒否し、遺族に「損害賠償請求権を放棄するなら死亡見舞金の申請を考える」と持ち掛けたという。(後略)

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