わいせつ加害教員に聞き取り、自身を点検できるチェックシートの活用広がる
読売新聞オンライン 2020/11/24(火) 12:06配信
児童・生徒へのわいせつ行為で処分される教員が増加している問題を受け、性行動について逸脱した考えを持っていないかを教員自身が点検できるチェックシートを、奈良大の今井由樹子准教授(犯罪心理学)らが作成した。「自分の傾向を客観的にチェックすることで、自制につなげられる」といい、全国の教育委員会などに活用を呼びかけている。
「職場に相談できる人がいない」「児童・生徒への指導、励まし、ねぎらいのため、頭、肩、腕などに触れることがある」「自分の携帯で児童・生徒や保護者とやりとりすることがある」といった約30の質問に選択式で回答する形式。採点表と照合して、危険度が高い「赤信号」、注意が必要な「黄信号」になっていないかを把握できる。
今井准教授はスクールカウンセラーや臨床心理士として、非行や被害を受けた子どもの問題に関わってきた。2014年から中部地方の教委の依頼を受け、わいせつ行為の加害者となった教員への聞き取り調査をした。職場や家庭で孤立するなどストレスを抱えていたり、児童・生徒の体に触れることへの抵抗感が弱かったりすることに気がついた。
こうした分析に基づいてチェックシートを試作。17年に中部地方2県の小中高校・特別支援学校に勤務する教員計875人に回答してもらい、傾向を確かめた。
その後、加害教員13人にも回答してもらった。調査数が大きく異なり、統計上そのまま比較はできないが、特定の子と長時間にわたって個別面談をするなどの割合が著しく高いことなどが分かった。
複数の教委から導入に向けた相談があるといい、今井准教授は「被害を防ぐためのツールとして有効だと考えている。赤信号の場合は信頼できる人や臨床心理士などの専門家に相談してほしい」と話している。
■教委で活用広がる
文部科学省の調査によると、わいせつ、セクハラ行為で処分を受けた公立学校の教員は増加傾向が続き、2018年度、過去最多の282人に上った。予防のため、チェックシートを活用する動きは広がっている。
長野、長崎の両県教育委員会は、NPO法人「性犯罪加害者の処遇制度を考える会」(東京)が作成したチェックシートを導入し、公立学校の全教職員に配布し、自己の内面の振り返りに利用してもらっている。
長野県教委では導入した17年度に処分件数が前年度の7件から1件に減少。18年度は2件、19年度も3件にとどまったといい、担当者は「研修など様々な対策と合わせて、チェックシートが予防に一役買っていると思う」と話す。
気になる点があれば、考える会に直接、相談できる。代表理事で精神科医の福井裕輝さんは「治療につながったケースもある。チェックシートが橋渡しになれば」と期待する。
福井市教委も10月、児童・生徒や同僚への接し方を問う独自のチェックシートを子どもと関わる全教職員に配布。署名して提出させた。