「髪の黒染め訴訟」で流れ変わった「校則」…生徒が議論して歩む「緩和」の道

「髪の黒染め訴訟」で流れ変わった「校則」…生徒が議論して歩む「緩和」の道
読売新聞オンライン 2021/4/3(土) 9:12配信

 大阪府立高校に通っていた女性(21)が在学中、茶色い髪を黒く染めるよう学校に強要されたなどとして、女性側は大阪高裁に控訴しているが、提訴をきっかけに校則の在り方が注目され、各地で見直しの動きが続いている。(大阪生活教育部・北瀬太一、大阪社会部・上村真也)

「事実上の敗訴」…だが他校の点検・見直しの契機に

 大阪地裁は、髪の染色を禁じた校則や高校の頭髪指導に「違法性はない」と判断。校則の在り方は「各校の教育理念や方針、実情などによって異なる」としつつ、「正当な教育目的のために定められ、社会通念に照らして合理的な場合は違法と言えない」との見解を示した。そのうえで、髪染め指導の後で女性が不登校になった際の学校側の対応には問題があったとして、33万円の支払いを命じた。

 判決は、原告側が「事実上の敗訴」(弁護士)とする内容だったが、2017年の提訴を機に大阪府教育委員会は府立高に校則の点検、見直しを指示。全日制135校のうち53校で「茶髪を禁止」を地毛の茶色い生徒に配慮して「染色・脱色は禁止」に変更したり、「げたでの通学禁止」といった時代に合わない規定を削除したりした。

 大久保宣明・高等学校課長は「子供を育てるのにふさわしい校則に改善する柔軟さを学校が持ち続けなければならない」と自戒を込めて話す。

今も必要か…40年前の「下着の色は白」
 文部科学省は10年に示した生徒指導提要で、校則を「児童生徒が健全な学校生活を営み、よりよく成長していくための行動の指針」と定義。時代に合わせて見直すよう呼びかけている。

 特に、訴訟を機に市民団体などが実施した調査で「下着の色指定」など不合理な「ブラック校則」の存在が明らかになり、各教委は対応を迫られた。

 長崎県教委は昨年12月から県内の公立中学校、高校計237校に校則などで下着の色を白に指定していないかを調査。6割近い137校で指定していることが判明し、「時代に合わない」として各校や市町教委に見直しを求めた。

 学校が荒れていた1980年代頃、風紀を保つため下着の色をそろえたとみられ、県教委担当者は「当時は必要だったのかもしれないが、今は不要。学校は校則の意味を一つ一つ考えてほしい」と話す。

 熊本市教委も昨年、校則や生徒指導についてのアンケートを児童生徒に実施。今年2月、〈1〉児童生徒が自ら考えて決める仕組みを作る〈2〉必要かつ合理的な範囲で制定〈3〉内容の公表――を柱に据えた見直しの指針案をまとめた。市立学校の運営規則に、校則の制定、改廃の際に教職員や児童生徒、保護者が話し合うことや、校則を公表するといったルールを加えるという。

生徒参加で校則議論、学びに活用

 議論に生徒を参加させ、学びにつなげた例もある。

 岐阜県立岐阜北高は2月15〜26日、生徒会の呼びかけで自由な服装で通学する試みを実施。着こなしに細かな規定のある制服について、自由化も含めて生徒に考えてもらうことが狙いだ。生徒や保護者へのアンケートに基づき校則を変更すべきか検討する。

 生徒会委員の生徒(17)は「生徒の意見をまとめて、学校生活が快適になる改善策を提案したい」と述べ、鈴木健校長は「問題意識を持ち、自ら考え、動くことは主体性を伸ばし、周りにも良い影響を与える。誠実に対応したい」と話した。

 広島市の私立安田女子中高では、生徒の有志約20人が変えたい校則を全校アンケート。生徒同士で議論した上で学校側に伝え、スマートフォン持ち込みを原則禁止から条件付き容認にするなど3項目を変更した。安田馨校長補佐は「話し合いを重ねるなかで生徒が論理的に考え、意見を言えるようになった」と成長ぶりに驚いていた。

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