免許更新は「懲役1週間、罰金3万円」 先生も疑問の声
朝日新聞デジタル 2021/5/29(土) 18:00配信
2009年から続く教員免許更新制について、朝日新聞が教員の任命権を持つ67教育委員会にアンケートしたところ、53教委(79%)が「見直しが必要」と回答した。
学校の先生が、10年ごとに30時間以上の講習を自費で受ける教員免許更新制。なり手不足や多忙化が問題となるなか、当事者たちはどう受け止めているのか。
「ただただ、アリバイ的に授業をやっているという印象。有意義な時間にならなくて残念だった」
北海道の30代の高校教諭は、数年前に免許を更新した。近くに講習会場はなく、3泊4日で遠くの大学での講習に臨んだ。費用は受講料に宿泊費などを含め、約5万円かかった。
講習には小中高の教員が参加し、大学の講師がオンラインで講義する様子をひたすら見た。実践的な指導方法が学べるかと期待していたが、自然や文化など講師の専門分野の授業が繰り広げられただけ。自身が担当する数学に関する講義も、授業法にまつわる内容もない。職場に持ち帰って実践できる「収穫」はなかった。
学校では不祥事があるたびに校内研修が行われ、残業がさらに増える。睡眠時間が削られると、仕事上のミスも増加。そんな悪循環に陥っていると感じる。そこに更新講習が加わると、さらに時間を取られてしまう。「教員として新たな学びがあれば、時間やお金がかかっても文句はない。実態は、実のない講習を聞かされるだけなのが残念」
■各地の教師から疑問が次々「意義がない」「手間に対して利点が…」
文部科学省によると、更新講習は主に大学が開設し、受講生の評価はおおむね高いと説明する。プログラミングや教育哲学を学んだ元教員の30代男性は「楽しくて勉強になった。教員が研鑽(けんさん)するのはいいと思う」と話す。
講習で扱う項目は、文科省が「子どもの発達」「学校の危機管理」などと定める。ただ、細かい内容や形式は講師によって異なる。
福岡県の中学校教諭(36)は数年前に受講した。夏休みに5日間ほど研修センターに通い、朝から夕方まで話を聞き、筆記試験を受けた。「(教育委員会が行う)普段の研修内容と変わらない」と疑問を感じた。
職場は常に人手不足で、新卒でも学級担任になる。産休などで代わりの教員が必要になっても、なり手が見つからず、管理職から「大学の同級生で誰かできる人はいない?」と聞かれるほどだ。更新制の導入以降、免許に10年の期限が設けられ、現職ではない人の免許が切れていることが、影響していると感じる。「少しでも人を増やしてほしいのに逆効果だ。意義が全く感じられない」
神奈川県の小学校教諭(31)は、まだ更新時期を迎えていないが、受講費が自腹であることに疑問を感じている。休みの日に「拘束」されることも合わせ、職場では冗談交じりに「懲役1週間、罰金3万円」と評しているという。