いじめ第三者委員の氏名非公表 「調査の責任あやふやに」異論も
毎日新聞 2021/5/31(月) 10:32配信
石川県野々市市で今年2月、学校側にいじめを受けていると相談していた市立中学1年の生徒が自ら命を絶った。その後、市教委は第三者調査委員会を設置したが、委員の氏名などは公表しなかった。文部科学省は公表について自治体などの判断に任せており、各地で見解が分かれている。識者からは「最初に委員の氏名を出さないのは異例。責任があやふやになる」との声も上がる。【井手千夏】
市教委によると、生徒は2020年10月、学校のアンケートに複数の生徒から悪口を言われるなどしていると回答。学校は生徒や関係する生徒との面談などを続け、21年2月2日にいじめは解消したと市教委に報告した。一方、生徒は11月以降もアンケートでいじめを訴えたが、学校は市教委に報告しておらず、生徒は2月11日に自宅で亡くなった。
市教委は、いじめ防止対策推進法が定める重大事態と判断。同法に基づき、いじめの有無や自殺との因果関係などを検証する第三者委を設置した。市教委は4月に第三者委の初会合を開いたが、「委員の決定に影響を与える可能性がある」として、委員の氏名や所属の公表を拒み、弁護士や学識経験者など5人で構成していることだけ発表した。市教委は「遺族には委員が確定した時点で、段階的に伝えた」としている。
文科省は同法やガイドラインで、いじめにより自殺などが起きた場合、第三者委による調査を求めている。ガイドラインでは「公平性・中立性が確保された組織が客観的な事実認定を行うことができるよう構成する」と明記し、委員は弁護士や精神科医、学識経験者らで構成するよう規定している。
文科省は委員の氏名などについて、調査結果を公表する時には併せて示すことが望ましいとするものの、設置当初での公表について「決まりはない」として設置主体や第三者委の判断に委ねている。担当者は「最初に明らかにすることで、インターネット上での中傷などの二次被害が起きたり、委員に要望を出す人が出てきたりして、調査に影響が出る可能性がある」と理由を説明する。
各地でも判断が分かれる。福岡県久留米市で19年7月、市立中学3年の女子生徒が自殺したことを受け市教委が設置した第三者委では、当初から委員の氏名や所属を公表した。同市教委は「公平性・中立性を確保する意味で隠すという選択肢はなかった」と言う。
◇「公表が信用性の担保になる」
11年に大津市で発生したいじめ自殺問題で第三者委副委員長を務めた、渡部吉泰弁護士(兵庫県弁護士会)によると、プライバシーの観点から委員の氏名を公表しないこともあり得るとしながらも、「私の認識では異例」との認識を示す。
野々市市教委は文科省のガイドラインに沿い、報告書公表時には委員の氏名などを明らかにする方針を示すが、渡部弁護士は、大津のケースで当初から委員を公表して調査を行ったことを挙げ、「私は批判されても構わないと思い、調査してきた。それぐらいでなければ当事者に物を言えないのでは」と話す。
さらには公表が信用性の担保になるとし、「責任の所在を明らかにした上で調査を進めていくことが大原則だ」とする。いじめを受けた当事者や市民の理解が得られる対応が自治体には求められている。
◇相談窓口
・児童相談所虐待対応ダイヤル
189=年中無休、24時間。
・24時間子供SOSダイヤル
0120-0-78310=年中無休、24時間。
・子どもの人権110番
0120-007-110=平日午前8時半〜午後5時15分、土曜・日曜・祝日・年末年始は休み。
・チャイルドライン
0120-99-7777=午後4〜9時(対象は18歳まで)、12月29日〜1月3日は休み。
https://childline.or.jp/
この問題は今年2月、野々市市で学校にいじめの被害を訴えていた女子中学生が自殺したものです。学校側はいじめが解消したとの報告書を市教委に提出。しかし、女子生徒の家族は生徒が別のいじめ被害にあっていたと訴えていました。