支援学級の児童らに「お前はクソや」「生きる価値なし」…教諭の釈明「強く言っても動じないから」
読売新聞オンライン 2021/10/4(月) 7:59配信
兵庫県の姫路市立小学校の特別支援学級に通う児童6人に対し、計34件の暴言や体罰を行ったとして、県教委は男性教諭(39)を懲戒免職処分とした。同僚は少なくとも7回、同校の管理職に対応を求めたが改善されず、問題行為は3年にわたって続いた。被害が拡大する前に、なぜ止められなかったのか。(畑夏月)
1人で34件
元教諭は2011年度採用。同小には16年度に赴任し、17年度を除いて支援学級を任されていた。自閉症や情緒障害など異なる障害のある児童を受け持ち、今年度は1〜6年生の5人を担当していた。
処分歴はなかったという元教諭だが、発覚した暴言や体罰は悪質なものばかりだった。▽水を怖がる児童を無理やりプールに入れる▽かばんを収納するなどの身支度をしなかった児童に対し、「生きる価値なし。お前はどうしようもない」と発言▽叱られて泣く児童に「お前はクソや。クソ以下やったらどうするんや。死ぬしかない」――など。
不適切な指導は、18年度16件、19年度1件、20年度8件、21年度8件で、時期不明の1件と合わせると計34件に上る。元教諭は「児童のパニックを抑えようとしたため」と釈明したが、「強く言っても動じないから、怒りに任せてやった」とも述べているという。
たまりかね
「もう、いちいち言わんといてください」
元教諭は今年6月、問題行為を目撃した同僚にこう言って、口止めしていた。
同僚は18年度から少なくとも計7回、管理職に元教諭の悪質な言動を相談。その都度、学校側から口頭で注意を受けていたためだ。
一方、同校は市教委に報告せず、問題が表面化することはなかった。
事態が動いたのは今年6月15日。たまりかねた同僚が一連の不適切な指導を詳細に記したメモを初めて校長らに示したためだ。
同校は翌日、市教委に報告。元教諭は暴言や体罰を認めたため、県教委は処分の検討を始めた。
懲戒処分の指針では「体罰を常習的に行い、隠蔽(いんぺい)し、特別な支援を要する児童生徒に対して行った職員は、停職または減給とする」と定めるが、処分は最も重い懲戒免職となった。
県教委はその理由を「常習性に加え、人権意識を損なう発言、口止めの悪質さ。総合的に教職員としての資質を欠く」と説明する。
「密室性」
元教諭の問題行為はなぜ止まらなかったのか。
20年度に同校の教頭だった現在の校長は、改善を求めた同僚から十分な聞き取りをしなかったことが原因とみている。
口頭注意した後も担任を続けさせており、校長は「認識が甘かった」と反省する。県教委は適切な対応を怠ったとして、校長も減給処分としている。
元教諭は人知れずストレスを抱えていた可能性も指摘されている。市内の一部の小学校で盛んなクラブ活動の「金管バンド」で熱心に顧問を務めていたからだ。
元教諭は「金管がなかったらもう少し休めるのに」と周囲にあたることもあったほか、昨春からのコロナ禍で大会が中止となり、落胆していたという。
同校の支援学級は担当者以外が行き来しにくい場所にあり、一般社団法人「日本自閉症協会」の会長で、児童精神科医の市川宏伸さん(76)は「支援学級をほかの先生がかかわらない『密室』にしていたのだったら、問題だ。異変に気づいた先生は他にもいたのではないか」と指摘する。
その上で「支援学級は個人に合わせ、指導や注意方法を考えるのが大前提だ。それが出来ない元先生の悪質行為の芽をもっと早く摘むべきだった」としている。
兵庫県姫路市立城陽小の特別支援学級の児童6人に「生きる価値なし。死ぬしかない」など計34件の暴言や体罰をしたとして、県教委は21日、同学級の担任、籔田侑亮(ゆうすけ)教諭(39)を懲戒免職処分にした。
県教委によると、籔田教諭は担任になった2018年度から、当時小学1年と3年の男子児童に足をかけて倒し、ねじ伏せるなどの体罰を繰り返した。プールの授業で水を怖がる2年の児童の顔を押さえて水面につけたこともあった。
21年4月には身支度をしなかった4年の男子児童に「生きる価値なし。死ぬしかない。早く転校しろ」などと暴言を吐いた。5月、同じ児童を叱って「お前はクソ以下や」とののしり、「学校をやめる」と伝えてきたこの児童に「ありがとう。ほんまに絶対やめろよ」と発言。6月には同じ児童が花の水やり当番の札を隠したことに立腹し、「お前なんか必要ない。消えろ」と言ったという。
同学級で担任をサポートする教職員は18年度から籔田教諭の体罰などを当時の校長に報告していたという。20年度に同校に赴任した湊泰宏校長(55)も21年4月に報告を2回受けたが口頭注意にとどめ、6月に3回目の報告を受けて、初めて市教委に連絡した。籔田教諭はこの直後から病気休養し、県教委の調査に「児童に強く言っても動じず、怒りにまかせてやってしまった」と説明したという。
湊校長は取材に「籔田教諭は与えられた仕事に真面目に取り組んでいた。口頭注意で改めると思っていた私の認識が甘かった」と話した。県教委は監督責任として、湊校長も減給1カ月(10分の1)の処分にした。【井上元宏、後藤奈緒】