児童施設で相次ぐ性犯罪…「密室」で信頼を悪用、識者は警鐘
西日本新聞 2021/12/3(金) 11:06配信
福岡県弁護士会は2日、指導員が入所児童にわいせつな行為をしたとして実刑判決が確定した児童養護施設(北九州市小倉南区)を運営する社会福祉法人(同区)に対して、虐待防止の対策が不十分だとして、人権救済の勧告をした。意思表示が困難な年齢や性格の子どもへの定期的な面談の実施や職員研修の充実などを求めた。
同会などによると、施設の指導員の男は2016〜19年、19年11月には北九州市が児童福祉法などに基づき、施設の管理体制見直しなどを求める改善勧告を行っていた。
施設の元職員が同会に人権救済を申し立てていた。今回の勧告は、市の改善勧告の徹底に加え、児童らのサポートを重視し、施設内の被害を相談できるような体制の構築を求めた。
同法人の担当者は「(勧告を)真摯(しんし)に受け止め、引き続き、子どもの権利擁護の強化や徹底に努める」とコメントした。市子育て支援課は「重い案件だと受け止めている。二度と起きないよう、改善が図られているか注視していく」としている。
(笠原和香子、岩谷瞬、上田泰成)
専門家「外部への相談体制整備を」
児童養護施設の職員らが入所する子どもにわいせつ行為をする事件は後を絶たない。親代わりで、最も身近な存在である信頼関係を利用したり、外部の目が届きにくい施設内の「密室」で事件が起きたりするケースが目立ち、専門家は「施設の小規模化が進む中、職員と子どもはより密接な関係になる。問題を早期に把握するために、子どもや職員が外部に相談できる体制を整えることが必要だ」と指摘する。
熊本県警は11月24日、男は「性的欲求を抑えられず、信頼をもてあそんでしまった」と話しており、県警は、数年にわたり、わいせつ行為を続けていたとみている。
児童養護施設に22年勤務した経験があり、入所する子どもへの支援活動を行うNPO法人「こどもサポートネットあいち」(名古屋市)の長谷川真人理事長(78)は「職員は多忙で子どもの話を聞く余裕がなかったり、他の職員の仕事に無関心だったりする。そうしたこともあり、問題が発覚した時には手遅れになっているケースが多い」と指摘する。
一般的な家庭環境に近づけるため、職員3人程度で6人の子どもを担当する地域小規模施設が増加し、職員の負担が大きくなっているという。長谷川理事長は「各施設が、職員同士の意見交換会や、それぞれが抱える問題を出し合って対応を考えるケース検討会を実施する必要がある。子どもや職員が、弁護士、臨床心理士など外部の専門家に気軽に相談できる窓口を設け、施設間の交流を進めて風通しを良くすることも大切だ」と話した。
(吉田真紀)